文献詳細
文献概要
特集 統合失調症とは何か―Schizophrenia概念の変遷
神経画像解析から見た統合失調症の病態と疾病概念の変遷
著者: 大久保善朗1 須原哲也2
所属機関: 1東京医科歯科大学大学院・保険衛生学研究科・生命機能情報解剖学 2放射線医学総合研究所・脳イメージングプロジェクト
ページ範囲:P.583 - P.588
文献購入ページに移動今から百年前,Kraepelinは躁うつを繰り返しながらも荒廃過程をとらない躁うつ病に対して,緊張病,妄想,痴呆という異なる症状を呈しながらも,進行性に経過し,荒廃状態に至る早発性痴呆を対峙させた二大疾病概念を提案した。Kraepelinは荒廃過程をとる統合失調症(精神分裂病)の根底に器質的な共通の原因を持つ疾患を想定し,将来の科学的な解明を期待していたと思われる。しかしながら,進行麻痺やアルツハイマー病を特定した古典的神経病理学は,統合失調症について特異的な所見を発見するに至らなかった。やがて抗精神病薬が発見されると,統合失調症は,薬理学的な異常が想定されることから,機能性精神病として分類されるようになった。
1970年代,HounsfieldとCormackによって開発されたコンピュータ断層(CT)の原理は画像診断技術に大きな革新をもたらした。CT検査は,たちまち脳器質疾患や神経疾患の診断のためには必要不可欠の検査法となり,HounsfieldとCormackはその功績によってノーベル賞を受賞した。CTの原理の応用により,核磁気共鳴現象に基づくMRI(magnetic resonance imaging)とMRS(magnetic resonance spectroscopy)が生まれ,核医学領域ではPET(positron emission tomography)とSPECT(single photon emission computerized tomography)の実現へと発展した。現在では各種画像解析技術を用いて統合失調症の脳形態や脳機能のさまざまな側面からの病態評価が進んでおり,その成果は統合失調症の疾病概念にも大きな影響を与えている。
掲載誌情報