文献詳細
短報
Donepezil投与後に生じた興奮・焦燥に対してtandospirone加薬が有効であったアルツハイマー型痴呆の1例
著者: 原田貴史1 小笠原一能1
所属機関: 1医療法人財団大樹会総合病院回生病院心療科
ページ範囲:P.655 - P.657
文献概要
Donepezilはわが国最初のアルツハイマー型痴呆の治療薬である。donepezilの副作用の報告として,消化器症状や錐体外路症状ばかりでなく,焦燥,攻撃性,興奮など多彩な精神症状や行動障害を示すこと5)がわかってきた。donepezil投与により患者のADLは改善したが活動性や攻撃性が亢進し介護負担は増悪した報告4)もある。donepezilの効果には限界があるにしても,ほかには痴呆症状の進行を抑制する薬剤はなく,臨床の場においてこの薬に対する期待は大きい2)。
今回我々が報告するのは,donepezil投与後意欲や表情は改善したが,約3か月目頃より,興奮と焦燥感を認めたアルツハイマー型痴呆の75歳女性である。donepezilの減量や中止を考えたが家族は投与継続を希望したため,tandospironeを加薬したところ,次第に精神症状は安定した。文献的考察を加えて報告する。
掲載誌情報