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抗精神病薬の作用機序に関する新しい概念―ドーパミンD2受容体での「速い解離」と部分アゴニスト作用
著者: 仙波純一1
所属機関: 1放送大学教養学部
ページ範囲:P.916 - P.926
文献購入ページに移動はじめに
最近,錐体外路症状をひき起こしにくい非定型抗精神病薬の開発が進み,統合失調症の治療に新しい展望が開けている。これに伴い,抗精神病薬の作用機序として従来から承認されていたドーパミンD2受容体の遮断という概念以外に,非定型抗精神病薬の薬理学的特性を踏まえ,抗精神病薬の作用機序についていくつかの概念が新しく提唱されている。これらの新しい概念には,ドーパミンD2受容体からの「速い解離」,ドーパミン自己受容体への作用,D2受容体への部分アゴニスト作用などがある。これらの概念が生まれた背景には,非定型抗精神病薬が臨床的に広く使用されるようになったことに加え,統合失調症患者の脳内のドーパミン受容体をPETなどによって機能的に解析できるようになったことが挙げられる。これらの新しい概念は,今後の抗精神病薬の開発やその作用機序を理解する助けとなるばかりでなく,臨床家にとっても新しい抗精神病薬の使用法を試みる上で有用であり,さらには抗精神病薬の作用部位から統合失調症の病因を探る新しい手掛かりとなると思われる。そこで本稿では,はじめに従来からの抗精神病薬と非定型抗精神病薬の作用機序を概観し,次にそこから得られた知識をもとに,抗精神病薬の新しい概念を紹介していく。
最近,錐体外路症状をひき起こしにくい非定型抗精神病薬の開発が進み,統合失調症の治療に新しい展望が開けている。これに伴い,抗精神病薬の作用機序として従来から承認されていたドーパミンD2受容体の遮断という概念以外に,非定型抗精神病薬の薬理学的特性を踏まえ,抗精神病薬の作用機序についていくつかの概念が新しく提唱されている。これらの新しい概念には,ドーパミンD2受容体からの「速い解離」,ドーパミン自己受容体への作用,D2受容体への部分アゴニスト作用などがある。これらの概念が生まれた背景には,非定型抗精神病薬が臨床的に広く使用されるようになったことに加え,統合失調症患者の脳内のドーパミン受容体をPETなどによって機能的に解析できるようになったことが挙げられる。これらの新しい概念は,今後の抗精神病薬の開発やその作用機序を理解する助けとなるばかりでなく,臨床家にとっても新しい抗精神病薬の使用法を試みる上で有用であり,さらには抗精神病薬の作用部位から統合失調症の病因を探る新しい手掛かりとなると思われる。そこで本稿では,はじめに従来からの抗精神病薬と非定型抗精神病薬の作用機序を概観し,次にそこから得られた知識をもとに,抗精神病薬の新しい概念を紹介していく。
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