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文献詳細

雑誌文献

精神医学46巻1号

2004年01月発行

文献概要

特集 臨床心理技術者の国家資格化についての主張

国家資格はなぜ必要か

著者: 宮脇稔1

所属機関: 1財団法人浅香山病院精神障害者社会復帰施設アンダンテ,全国保健・医療・福祉心理職能協会

ページ範囲:P.21 - P.24

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はじめに

 医療保健領域における臨床心理技術者は,詳しい統計はありませんが現在4,000人とも5,000人とも言われています。精神保健領域における臨床心理技術者の活動はすでに50年に及び,2001年の統計では精神科病院に勤務する臨床心理技術者の人数は2,106名で,そのうち651名は非常勤です。その他の主な勤務先は精神科診療所や心療内科,小児科をはじめとする一般各科です。

 臨床心理技術者が医療保健領域でこのような人数にまで育ったのは,カウンセリング,心理テスト,心理学的援助を必要とするクライアントのニーズと,医師,コメディカルスタッフからのチーム医療を担う専門職としての信頼を得てきた結果によるものです。

 しかしながら,ここ10数年に及ぶ景気の低迷は,臨床心理技術者の世界にも深刻な影響を与えています。国家資格という専門性と責任性の担保がなく,経済的裏付けもない職種の採用は,いかにクライアントやチーム医療スタッフからのニーズが高くとも経営を圧迫する要因であり,採用が控えられる職種となっています。
 また,この傾向は1997年に精神保健福祉士,言語聴覚士の国家資格が制定されてからいっそう顕著となります。医療保健領域における数少ない無資格専門職種であり,経済的な将来展望さえ見込めない臨床心理技術者の現状は採用が控えられるだけでなく,臨床心理技術者の補充に,臨床心理技術者以外の資格化された専門職種を充てるようになってきています。

 こうした状況に歯止めをかけ,クライアントやスタッフからのニーズに応えるためには,臨床心理技術者の国家資格を創設し,その業務の専門性と責任性を担保し,これまでの臨床心理技術者の実績を反映した人員の確保を働きかける必要があると考え,臨床心理技術者の職能団体として全心協を結成しました。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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