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雑誌詳細

文献概要

特集 臨床心理技術者の国家資格化についての主張

心理士が医療チームへ参加する必要性と国家資格―地域医療・チーム医療に向けて

著者: 穂積登1

所属機関: 1ホヅミクリニック

ページ範囲:P.43 - P.47

はじめに

 私は,最初に教育心理学を学び,その後医学を学んで精神科医となり,大学,病院,診療所で臨床に携わってきた。1975(昭和50)年には精神科診療所を開設し,数名の心理士に手伝ってもらいながら外来診療を続け,デイケアやナイトケアも行っている。その傍ら,いくつかの大学の保健管理センターで学生相談を30年以上続けてきた。心理学をかじった人間として,また,医療や学生相談の現場で心理士とともに働いてきた医師として,心理士が医療分野やその他で活動分野を広げているのはうれしいかぎりだ。しかし,心理士が医療の場でいまだに無資格のままであることによって,その働きが公に認められず,責任ある役割を果たせない現状を大変残念に思っている。心理士が医療チームの一員としてますます活躍できるように,医療における心理士の国家資格化の必要性を強く主張したい。

 現在,心理士の国家資格化をめぐって,医療に限定した医療保健心理士(仮称)にするのか,医療に限らず,学校,企業,児童相談など社会生活全般の広い分野における心の悩みを援助する心理士の資格を作るのかで意見が分かれている。

 前者については,医療において長い間心理士が働いてきたという実績があり,長期間に及んで厚生労働省で審議を繰り返し資格としての輪郭も明確になってきているため,早急に進めてもらいたいと希望している。しかし,後者のようなあまりに広範囲な資格は,資格の目的と根拠が希薄となる。さらに,広範囲の分野を網羅する「国家資格」は,かえって心の問題における多様性を押しつぶす危険性がある。広範囲な資格を作ることについては,この分野にかかわる多くの人が広く議論を重ねる必要があり,時期尚早と考える。

掲載雑誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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