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文献詳細

雑誌文献

精神医学46巻10号

2004年10月発行

展望

双極性うつ病(Bipolar Depression)の薬物療法

著者: 松尾幸治1 桑原斉2 加藤進昌1 加藤忠史3

所属機関: 1東京大学大学院医学系研究科精神医学分野 2東京都立松沢病院精神科 3理化学研究所脳科学総合研究センター精神疾患動態研究チーム

ページ範囲:P.1024 - P.1034

文献概要

はじめに

 大うつ病および双極性障害躁病エピソードに関しては,すでに実証的根拠に基づいて治療アルゴリズムが作られ,治療戦略が明確に示されてきている。しかしながら,双極性障害大うつ病エピソード(以下,双極性うつ病,Bipolar Depression)に関しては,躁転が生じうること,再発のリスクが高いこと,自殺率の高さなど,考慮すべきことが多いにもかかわらず,治療アルゴリズムが確立しておらず,治療に難渋することが多い。近年,欧米ではlamotrigineなどの気分安定薬の有効性やolanzapineなどの非定型精神病薬の気分安定効果が示唆されるなど,双極性うつ病の治療が大きく変化してきている。それに伴い,多くの双極性うつ病の総説16,21,27,36,54,57,63,73)が報告され,関心の高さを示している。しかしながら,本邦ではこれらの薬剤の承認や適応拡大が遅れており,双極性うつ病の治療に関する総説も,我々の知る限りみられない。

 本稿では,双極性うつ病の急性期療法および維持療法について,最近の知見を中心にまとめた。なお,本稿で述べる「バルプロ酸(VPA)」については,本邦で採用されているsodium valproateの他に海外では,sodium divalproateやvalpromideが市販されており,最近の知見の多くはこれらを用いた研究である。これらもすべてまとめてバルプロ酸製剤(VPA)として記述した。また,甲状腺ホルモンの付加療法は大うつ病では知見が蓄積されてきているが,双極性うつ病では比較研究がされていないため今回は割愛した。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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