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文献詳細

雑誌文献

精神医学46巻10号

2004年10月発行

文献概要

特集 精神科医療における介護保険制度

介護保険におけるBPSDの診断と問題点

著者: 水上勝義1 朝田隆1

所属機関: 1筑波大学臨床医学系精神医学

ページ範囲:P.1051 - P.1056

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はじめに

 社会全体で高齢者の介護を支え合い,高齢者が医療と介護の調和のとれた療養を受けられることを目的とし,2000年4月から介護保険がスタートした。以後,要介護認定者数,社会資源利用者数ともに増加し続けており,制度自体が定着した感がある。痴呆のある高齢者もその多くが介護認定を受け,社会資源を活用しながら在宅療養を続けているが,しばしば在宅療養の継続が困難となる状況が訪れる。そのもっとも大きな原因の1つが,Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia(BPSD)の出現である。

 BPSDとは,痴呆患者にみられる認知障害以外の,知覚,思考内容,気分あるいは行動面における症状の総称である。BPSDの名称は,1996年に米国で開催された国際老年精神医学会のシンポジウムで命名された,Behavioral and Psychological Signs and Symptoms of Dementia(BPSSD)に由来する7)。次第にBPSSDからsignsが省かれることが多くなり,現在ではBPSDと呼ぶのが一般的となった。在宅の痴呆高齢者のおよそ80%に何らかのBPSD症状がみられるとされ10),また,BPSDは,痴呆の程度が軽症から中等症に進行すると多く出現するようになる4,10)。そして介護者を精神的にも肉体的にも疲弊させてしまうのである。したがってBPSDの正確な診断や評価に基づいた適切な対応が,在宅介護を続けるための鍵だといっても過言ではない。BPSDの対応には,薬物療法はもとより,介護保険制度により,社会資源を有効に活用しながら本人や介護家族を支えるという面も含まれる。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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