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文献詳細

雑誌文献

精神医学46巻11号

2004年11月発行

文献概要

展望

自閉症スペクトラムの画像研究

著者: 遠藤太郎12 北村秀明1 塩入俊樹1 染矢俊幸1

所属機関: 1新潟大学大学院医歯学総合研究科精神医学分野 2あいち小児保健医療総合センター心療科

ページ範囲:P.1144 - P.1161

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はじめに

 自閉性障害(自閉症)は,対人的相互反応およびコミュニケーションの著しい障害またはその発達の障害,および著明に制限された活動と興味の範囲を基本的特徴に持つ発達障害の一群である4)。この障害は3歳以前に発症し,自閉症患者の約70%が精神遅滞を合併し54),現時点では有効な治療法が確立していないため患者の生涯にわたり問題となる。また,その有病率は,研究間で差があるものの,典型的な自閉症で0.05~0.1%4,35),自閉症を含む広汎性発達障害全体では0.6%35)に及ぶといわれている。

 自閉症の重症度,機能レベルは多様であり,異なるいくつかの類似した障害が存在することもわかってきた。これらの障害は,アスペルガー障害や特定不能の広汎性発達障害などを含み,自閉症とアスペルガー障害を同じスペクトルで考えるべきかといった議論があるものの,しばしば同一の自閉症スペクトル上にあるものとして概念付けられる(自閉症スペクトラム)93)

 自閉症の原因として,自閉症患者の約20%が何らかの生物学的原因(ヘルペス脳炎,結節性硬化症,脆弱X症候群など)に起因するものと考えられている80)が,残りの80%は,自閉症を説明できるような生物学的原因はいまのところ解明されていない。

 しかしながら最近のneuroscienceの進歩,特にneuroimagingの技術により,in vivoで自閉症スペクトラムの病態を解明しようという試みがなされ,自閉症スペクトラムの臨床症状と関連する脳の領域が徐々に明らかにされている(図)。本稿では,自閉症スペクトラムのneuroimaging研究のこれまでの知見を統括し,現時点で自閉症スペクトラムの生物学的原因がどれ程度わかっているのかを明確にさせ,今後の研究の方向性についての考察を行う。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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