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研究と報告
55歳発症の初期分裂病(中安)の1例
著者: 田中健滋1
所属機関: 1電気通信大学保健管理センター
ページ範囲:P.1193 - P.1199
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55歳発症の初期分裂病(中安)症例を報告した。
初期症状は症状学的に若年例と同じだったが,これらを当初より自我異和的にとらえ,早期に受診し,陽性初期症状に対しては症状およびその中に現れる対象へ対抗的反応を示している点が異なっていた。陰性初期症状のうち,即時記憶の障害は作業記憶の障害に相当し,前頭葉機能障害が示唆された。即時理解の障害は意識上認知障害を意味し,即時記憶の障害とも併せ,意識上認知機能健常を前提とする中安の状況意味失認─内因反応説には合致しない所見と考えられた。治療面では,sulpiride 900mg/日での治療効果を認め,中安の統合失調症の非ドーパミン仮説に沿わない経過だった。
本例は,発症年齢,症状への主体の反応,薬理学的反応などが,若年発症の典型例とは異なっており,このような遅発性の初期分裂病症例のさらなる蓄積と検討が,まだ確定していないと思われる初期分裂病と統合失調症の疾病論的関係を検討する上で有用と考えられた。
55歳発症の初期分裂病(中安)症例を報告した。
初期症状は症状学的に若年例と同じだったが,これらを当初より自我異和的にとらえ,早期に受診し,陽性初期症状に対しては症状およびその中に現れる対象へ対抗的反応を示している点が異なっていた。陰性初期症状のうち,即時記憶の障害は作業記憶の障害に相当し,前頭葉機能障害が示唆された。即時理解の障害は意識上認知障害を意味し,即時記憶の障害とも併せ,意識上認知機能健常を前提とする中安の状況意味失認─内因反応説には合致しない所見と考えられた。治療面では,sulpiride 900mg/日での治療効果を認め,中安の統合失調症の非ドーパミン仮説に沿わない経過だった。
本例は,発症年齢,症状への主体の反応,薬理学的反応などが,若年発症の典型例とは異なっており,このような遅発性の初期分裂病症例のさらなる蓄積と検討が,まだ確定していないと思われる初期分裂病と統合失調症の疾病論的関係を検討する上で有用と考えられた。
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