icon fsr

文献詳細

雑誌文献

精神医学46巻11号

2004年11月発行

文献概要

試論

20世紀前半の「脳病理学」における「全体論」の歴史的背景と現代の神経心理学,(精神)医学,人文学,諸科学との関連―Kurt Goldsteinの考想を中心に

著者: 濱中淑彦1

所属機関: 1八事病院

ページ範囲:P.1225 - P.1233

文献購入ページに移動
はじめに

 「脳病理学Hirnpathologie」における「全体論」と「局在論」,やや次元がずれるのだが「知性論者」と「反知性論者」の論争(井村 1954,大橋 1960)34)が,20世紀前半に,主として失語学説について白熱の議論の対象であったとしても,とりあえずは過去の歴史に属する問題だと言わざるを得ないかもしれない。とはいえ「全体論」的考想は,脳病理学の延長上にある神経心理学neuropsychology(濱中 1985)23)においても若干かたちを変えてのことではあるが,幾つかの主要な学説に登場し,その一部は20世紀前半の論議とつながりがないわけではなく,殊に最近の認知リハビリテーション(例えばPrigatano 1999)には「全体論」再評価の動きがあって,これについては別稿(濱中)25)で論じる機会があった。他方それは,神経心理学以外の医学と諸科学の領域でも,次元は異なるにしてもさまざまに論じられる主要テーマの一つとなっており,あるものは神経心理学や(神経)精神医学とも無縁とは言い切れぬ局面を示している。

 本稿では「脳病理学」時代の「全体論」を,なかんずくGoldstein15~18)の「有機体」論(1927~1948)を中心として再検討し,従来詳論される機会のなかった「全体論」の起源と周辺,歴史的背景を概観した上で,現代の医学や諸科学との関連を,筆者の知る範囲で考察したい。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?