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文献詳細

雑誌文献

精神医学46巻12号

2004年12月発行

文献概要

オピニオン 精神科専門医に求められる精神療法

良識ある精神医療のために

著者: 小倉清1

所属機関: 1クリニックおぐら

ページ範囲:P.1256 - P.1258

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 近年,医学は全体としてめざましい発展をとげてきている。さまざまな新しい知識や技術の開発に負うところが大きいのであろうが,それと共に医学はその恩恵を直接うける患者やその家族による理解や協力なしには発展してこなかったはずである。この理解や協力をうるには(compliance)informed consentが欠かせない手続きとなるわけである。このことは精神医学の臨床でもそのままあてはまる。したがって精神科専門医に求められる最低限の必須条件として,患者やその家族とごく良識ある話し合いを重ねることができる能力と実践とがまず挙げられると私は信ずる。この良識ある話し合いを重ねることに古いも新しいもない。ごくごく当り前のこと,基本中の基本であると思う。最近「精神療法はもう古い。薬物療法一本でよくなる」という言葉を臨床医の口からきくことが増えているように思うが,これは全くの勘違いの発言であるし,医者の思い上がりを示すものであると思う。

 臨床精神科医はお話し合いをするのが商売である。患者さんたちは「よく話をきいてくれるかどうか」で医者の質を判断していることが多いことくらい誰もが知っている。患者さんは医者がいうところの「精神療法」を必ずしも求めているわけではない。ただ話をきいてもらいたいのである。それが大切なのである。ここにおいて問題が生じることになる。患者さんとお話をする能力(あえて能力という)とその意志をもち合わせない医者が,臨床の場で困惑のあげくに「精神療法はもう古い」といって,自分の能力のなさと無責任さをごまかしているにすぎないのである。そういう医者を今後,精神科専門医と呼ぶのが相応しいかどうかという問題がここにある。では「良識ある話し合い」とは何か,「精神療法」とどこが違うのかという話になる。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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