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研究と報告
塩酸donepezil投与により意欲改善をみた右視床前部梗塞の1例
著者: 北林百合之介1 上田英樹1 國澤正寛1 濵元泰子1 田村雅也1 松本良平1 福居顯二1
所属機関: 1京都府立医科大学大学院医学研究科精神機能病態学
ページ範囲:P.1275 - P.1281
文献購入ページに移動右視床前部梗塞の1例を経験した。症例は76歳右利き女性。72歳より意欲低下,物忘れが出現。頭部MRIで右視床前部梗塞,右乳頭体萎縮,SPECTで右視床,右大脳半球の血流低下を認めた。神経心理学検査では前頭葉機能,記憶,構成の障害を認めた。記憶障害については時間的順序の記憶と遅延再生の障害が優位であった。塩酸donepezil投与後,両側前頭葉および右視床の血流が増加し,意欲の改善が認められた。右視床前部梗塞においては,連絡を持つ同側の前頭葉,その他の大脳皮質,Papez回路の機能障害から上述の症状が出現すると考えられた。また,同病態の改善に塩酸donepezilが有効である可能性が示唆された。
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