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文献詳細

雑誌文献

精神医学46巻12号

2004年12月発行

文献概要

短報

Donepezilによって遅発性ジスキネジアが改善した血管性痴呆の1例

著者: 田村達辞1 畑矢浩二1 吉村靖司1

所属機関: 1加計町国民健康保険病院精神科

ページ範囲:P.1323 - P.1326

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はじめに

 遅発性ジスキネジア(Tardive Dyskinesia;TD)は,抗精神病薬の長期投与に起因し,顔面表情筋,口周囲部,顎,舌や四肢体幹に出現する不随意運動である。その多くは3か月以上の服用で発現するとされ,定型抗精神病薬では1年後の累積罹患率が4.8%,4年後には15.6%との報告もある6)。危険因子としては,加齢,器質性脳病変,抗コリン薬などが指摘されており,定型抗精神病薬服薬1年での若年者の頻度約5%に対して,高齢者では22~30%とされる6)

 TDの治療は抗精神病薬の減量・中止を基本とするが,抗精神病薬中止後も遷延することも多い。また,実際の臨床では患者の精神病症状の悪化のために中止が困難な場合が多く,近年ではTDへのリスクが少ないと言われる非定型抗精神病薬への変更が試みられているが,最も推奨されているclozapineは現在本邦では使用できない。一方,危険因子である抗コリン薬の減量・中止も行うべきとされるが,TD患者の約20~50%に錐体外路症状が観察され6),これも減量・中止が困難な場合が少なくない。

 このような治療の困難さと関連して,TDの病態はまだ不明なところが多く,ドパミンのみならず,アセチルコリン,GABAなどの複合的な関与が想定されている3)。今回,我々は,TDにおけるコリン神経系の関与に着目し,TDの出現した血管性痴呆患者にコリンエステラーゼ阻害薬であるdonepezilを投与したところTDの著明な改善を認めたため,TD治療に関する貴重な症例と考え,考察を交え報告する。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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