文献詳細
短報
音楽幻聴(および言語性幻聴)を示した脳血管性痴呆の1例
著者: 大原一幸1 岩井雅之1 立田知大1 湖海正尋1 守田嘉男1
所属機関: 1兵庫医科大学精神神経科
ページ範囲:P.191 - P.193
文献概要
音楽幻聴は,耳疾患を有する高齢者,統合失調症者などにおいて報告されている1,2)。前者の音楽幻聴は,感覚遮断によるもののほか,脳器質性疾患でみられる非精神病性非言語性(要素性)の部分解体現象,すなわち幻覚症あるいはEyのいう幻覚症性エイドリー4)として理解されることが多い。統合失調症でみられる音楽幻聴については,馬場ら1)は「記憶表象から始まる仮性幻覚であり,病勢に応じて真性幻覚へ移行する可能性を持つ」と述べ,Clérambaultの精神自動症3),あるいは精神幻覚からの考察を加えている。我々は,難聴のない,脳血管性痴呆と考えられる高齢者男性に音楽幻聴(および言語性幻聴)が出現した症例を経験した。本例の音楽幻聴は,感覚遮断や幻覚症性エイドリー(幻覚症)からは理解できず,「仮性幻覚から進展した精神自動症」と考えられたので,若干の考察を加え報告する。
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