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巻頭言
診療場所を変えて
著者: 佐野輝1
所属機関: 1鹿児島大学大学院医歯学総合研究科精神機能病学分野
ページ範囲:P.222 - P.223
文献購入ページに移動 私は精神科医師として大学卒業後21年間あまりを愛媛県松山市近郊の大学病院中心に,そして一時期は単科精神科病院での診療に従事し,その後一昨年から鹿児島市の大学病院に診療の場を移している。その間,精神科医療の移り変わりを痛感し,また今回国内とはいえ診療の場が地域的に大きく変わり,比較精神医学的にも貴重な経験をしていると感じ,ここに雑感として記してみたい。
私が,精神科医としての研修を開始した昭和56年(1981年)の日本の社会状況というと,1960年頃に始まった高度経済成長のおかげで人々の生活は多少とも豊かになり,都市に人口が集中し,アメリカ型の消費型社会経済活動が地鳴りをあげて始まり,核家族化が急激に進行しつつある時期であった。文化・文明論の詳細をここで取り上げるつもりはないが,1986年から88年にかけて私がアメリカに滞在した折りに,当時の日本ではまだ見られなかった膨大な紙消費,ファストフードの氾濫などに代表される「便利で豊かな消費社会」,そして家族・家庭の崩壊と孤独な老後などを見て,日本社会がアメリカのそれを10~15年ほど後に追いかけるように感じた。
私が,精神科医としての研修を開始した昭和56年(1981年)の日本の社会状況というと,1960年頃に始まった高度経済成長のおかげで人々の生活は多少とも豊かになり,都市に人口が集中し,アメリカ型の消費型社会経済活動が地鳴りをあげて始まり,核家族化が急激に進行しつつある時期であった。文化・文明論の詳細をここで取り上げるつもりはないが,1986年から88年にかけて私がアメリカに滞在した折りに,当時の日本ではまだ見られなかった膨大な紙消費,ファストフードの氾濫などに代表される「便利で豊かな消費社会」,そして家族・家庭の崩壊と孤独な老後などを見て,日本社会がアメリカのそれを10~15年ほど後に追いかけるように感じた。
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