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研究と報告
高ナトリウム血症にて中心橋髄鞘崩壊症を生じ,その後てんかん発作が出現したアルコール多飲例
著者: 辻富基美12 畑中史郎2 郭哲次1 志波充3 篠崎和弘1
所属機関: 1和歌山県立医科大学神経精神科 2紀南総合病院神経精神科 3和歌山県立医科大学看護短期大学部
ページ範囲:P.279 - P.284
文献購入ページに移動長期にわたるアルコール多飲歴を持ち,高ナトリウム血症を呈しcentral pontine myelinolysis(CPM)を発症し,その後てんかん発作重積状態を含むてんかん発作を繰り返した症例を報告した。症例は52歳,男性。断酒後の肝障害,発熱のため入院し,通常の輸液を行った。入院時Na132mEq/lであったものが5日後では167mEq/lの高値であった。この間,強直間代けいれんと原因不明のせん妄が出現した。この後,両側の眼瞼下垂,軽度の歩行障害が出現した。入院から2か月後の画像所見にてCPMを示す所見がみられた。このことから,低ナトリウム値がみられない症例であっても血清ナトリウム濃度の急速な上昇により,CPMを発症したのではないか,この背景には断酒後の内分泌的な不均衡があり,SIADH様状態であった可能性が考えられた。
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