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短報
せん妄状態にクエチアピン投与と塩酸ドネペジルの中止が有効と考えられたアルツハイマー型痴呆の1臨床例
著者: 前嶋仁12 馬場元1 安宅勇人1 稲見理絵1 大沼徹1 井原裕1 鈴木利人1 新井平伊1
所属機関: 1順天堂大学医学部附順天堂越谷病院精神神経科 2順天堂大学医学部精神医学教室
ページ範囲:P.295 - P.298
文献購入ページに移動塩酸ドネペジルは,アセチルコリンエステラーゼに対する阻害作用を有し,アルツハイマー型痴呆の治療薬として1999年11月に本邦で発売された。本剤はアルツハイマー型痴呆のコリン障害仮説に基づき開発された薬物で,コリン作動性神経系の神経伝達を促進し,アルツハイマー型痴呆の認知機能障害への改善効果を期待されている。コリン作動性薬物は従来より治療薬として注目されてきたが,末梢性のコリン作用をも高め,コリン性の副作用が問題16)となっていたが,本剤は脳内のアセチルコリンエステラーゼにほぼ特異的に作用することで知られ,身体的副作用は少ないと考えられている。しかし,精神神経系に関する副作用としての興奮,暴力,介護への抵抗などの報告2~4,9,10,17)が散見されるようになり,慎重な使用が必要とされている。
筆者らは,塩酸ドネペジル投与中にせん妄状態が出現したアルツハイマー型痴呆の患者に対し,非定型抗精神病薬であるクエチアピン投与とともに塩酸ドネペジルを中断したことによりせん妄状態が軽快したと思われる1例を経験した。本剤の臨床的効果および副作用を検討するうえで興味ある症例と考えられ報告する。
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