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雑誌目次

論文

精神医学46巻6号

2004年06月発行

雑誌目次

巻頭言

在宅介護者の健康度と支援の必要性

著者: 保坂隆

ページ範囲:P.562 - P.563

 厚生労働省によれば,介護が必要とされる65歳以上の高齢者人口は,2000年に65歳以上が2,187万人・高齢化率は17.2%(6人にひとり)だったものが,2020年には65歳以上は3,334万人・高齢化率は26.9%(4人にひとり)と予想されている。

 これに呼応するかのように,わが国では2000年には介護保険制度が導入され,医療の場が入院(病院)から在宅(家庭)に急速に変換されてきた。その背景にあるのは,医療費の高騰を抑制するためであろうが,それだけでなく,高齢者のQOLの向上も考えられてのことであろう。しかし,その一方で,在宅介護者の負担については,これまであまり考えられてこなかったのではないだろうか。

展望

Mild cognitive impairmentをめぐって

著者: 埴原秋児 ,   天野直二

ページ範囲:P.564 - P.570

はじめに

 現在,アルツハイマー病(AD)の診断において,NINCDS-ADRDA43)やDSM-IV1)などの信頼性や妥当性の高い診断基準が臨床や研究の場面で用いられ,さらにMRIやSPECT・PETなどの機能画像の普及によって,ADの臨床診断の正確性はより高まった44)。現在,軽度から中等度のADの認知機能障害に対して,コリンエステラーゼ阻害薬による治療が行われ,痴呆の早期診断・治療は日常臨床に要求されている。また,アミロイドワクチンやγセクレターゼ阻害薬の開発など予防や根治を視点にした基礎研究の発展につれて,また,現行の抗痴呆薬の適応拡大の可能性など,ADの早期診断,あるいは発病以前の段階での診断や介入について関心が集まっている。

 従来から,加齢に伴う認知機能の低下を表す概念は古くからさまざまな名称で用いられてきたが,2001年,Quality Standards Subcommittee of American Academy of Neurology(QSSAAN)は正常加齢と痴呆の移行状態を表す概念としてmild cognitive impairment:MCI(軽度認知機能障害)という術語を正式に採用し51),MCIという術語が現在は頻繁に使用されている。しかし,MCIの概念には未だ若干の混乱がある15,48,65)。本稿では,高齢者にみられる認知機能障害の概念の変遷を紹介し,またMCIの臨床的意義,問題点,最近の動向を概説する。

特集 精神科医療における危機介入

地域における危機介入―措置入院制度の事前調査を手がかりに

著者: 竹島正 ,   立森久照 ,   三宅由子

ページ範囲:P.571 - P.577

目的

 危機は地域生活のさまざまな場面で発生し,その介入は,保健,医療,福祉のさまざまな場面で行われている。そのひとつに精神保健福祉法に基づく措置入院制度がある。本論文においては,精神保健福祉法第23条による一般人申請,第24条による警察官通報,第25条による検察官通報の運用実態から,地域における危機介入の課題を明らかにする。

地域における危機介入―法34条移送制度の実態と課題

著者: 高岡道雄

ページ範囲:P.579 - P.584

はじめに―地域精神保健活動と危機介入

 地域で生活をしている精神障害者が家族,近隣に迷惑行為を繰り返し,家族などから保健所に相談があり,危機介入が必要となる事例が増加している。相談があれば,まず緊急性があるかどうかを判断し,直ちに加療が必要である場合には,①措置症状(自傷他害)があれば措置入院により,②措置症状がなければ応急入院により,対処することになる。症状などから一刻を争う事例でないと判断すれば,③医療保護入院か,④任意入院に向けて訪問指導などの地域精神保健活動を行うことになる。

 このように医療に結びつけるための危機介入の時期,方法の判断には,緊急性があるかどうかが最も重要となる。この判断材料としては,家族からの聞き取りだけではなく精神障害者の自宅に訪問し本人や近隣住民,関係者と面談した結果,さらには精神科受診の既往があれば主治医連絡の結果なども総合的に検証し緊急性を判断する。

精神科医療における危機介入と精神科診療所の役割

著者: 羽藤邦利

ページ範囲:P.585 - P.590

危機とは

 「危機」とはわかりやすい言葉のようでいて,いざ定義しようとすると意外に難しい。肉親の喪失やリストラなど,生活を破綻させかねない「状況」を指すこともある。そうした状況に対応できないで,不安定となっている本人の「状態」を指すこともある。状況が悪いと状態が悪くなり,状態が悪いと状況が悪くなるから,状況の危機と状態の危機は常にワンセットである(表)。状況の危機を「危機状況」,状態の危機を「危機」と表現することが多い。本稿でもそれにならうことにする。主に状況が厳しいために起きている危機もあれば,本人の状態が著しく不安定であるために起きている危機もある。災害や重大な事件で引き起こされた危機などは前者であり,統合失調症の再燃による危機などは後者である。精神科医療では主には後者の危機を扱うが,前者の危機も精神科医療の対象となりうる。

危機介入と精神科医療―措置診察を中心に

著者: 吉住昭 ,   瀬戸秀文 ,   藤林武史

ページ範囲:P.591 - P.598

はじめに

 危機介入については,その定義あるいはコンセプトをめぐってさまざまなものがある。代表的な精神科の辞書や事典を見てみると,Campbellの辞書1)では危機介入を,「発達過程や予期しないできごとに直面した際,個人や集団に対する簡便精神療法」とし,技法に限定して定義している。一方,精神医学事典の中で稲村5)は,「カプランの二次予防の一部をなすものといえるが,危機の具体的内容としては,自殺のほか,心理的パニック状態,家出,不安,抑うつ状態,精神錯乱,悲嘆反応,衝動行為,犯罪・非行,急性薬物・アルコール中毒である」と述べている。このように危機介入を技法として述べる立場のものから,具体的内容を幅広くとり,かつその事態を引き起こす状況もさまざまなものを想定しているものまである。精神科医療現場で行う危機介入も,電話相談,訪問看護,救急の受診に対する対応などさまざまな場面が想定される。またそれに対し,医師,看護師,ケースワーカーなどの多職種のものが関与する。このように多様な事態にあらゆる職種のものが関与するため,以下では,危機という事態をとりあえず,精神障害者とされるものが,精神障害のために自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれがある事態ととらえ,その事態に対し精神保健指定医(以下,指定医)がどのような判断・介入を行ったのかを危機介入とし述べてゆきたい。

 さらに,指定医の介入がなされた事例については,さしあたり精神保健福祉法(以下,法)第24条の警察官通報と同25条検察官通報に限って述べる。そしてそのため,2001(平成13)年度厚生科学研究費補助金(厚生科学特別研究事業)「措置入院制度のあり方に関する研究」(主任研究者竹島正)と2002(平成14)年度同「措置入院制度の適正な運用に関する研究」(主任研究者浦田重治郎)の結果から,どのような事例がどのような事態(危機)で措置診察を受けるに至ったかを述べ,さらに残された課題など整理してゆく。

危機介入とアフターケア―措置解除から見えてくるもの

著者: 浦田重治郎 ,   瀬戸秀文 ,   立森久照

ページ範囲:P.599 - P.605

はじめに

 2003年7月,「心神喪失等の状態で重大な犯罪行為を行った者に対する医療及び観察等に関する法律(以下,医療観察法と略す)」が国会において成立し,2年以内に施行されることとなった。医療観察法が施行されると,「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(以下,精神保健福祉法と略す)」による措置入院制度は大きな変更を伴う。現在の措置入院の対象から医療観察法が対象と定めている者が除外され,精神保健福祉法が対象とする措置入院患者は重大な犯罪行為以外の他害行為と自傷行為に限定される。他害行為が限定されることにより他害行為が減少するが,自傷行為は変化がないために,結果としては自傷行為のほうに重みが大きくなる。また,措置入院制度が精神科救急の中で今まで以上に重要な役割を果たすようになると考えられる。

 医療観察法の成立はもう一つ重要な問題を提起した。医療観察法は対象者の社会復帰を前提とした入院医療を行うとともに,退院となった対象者あるいは通院処遇となった対象者には指定通院医療機関が医療を担う一方,社会復帰調整官が中心となり社会生活を支援する体制がとられることを定めている。現在検討中であるが,指定入院医療機関に入院となった対象者には入院中から退院後に向けた社会復帰対策が入院機関の職員だけでなく社会復帰調整官をはじめとする地域の生活支援に携わる組織も含めた計画が練られることになると考えられる。他方,従来の措置入院制度ではその対象者に限った社会復帰対策を講じていないばかりでなく,1995(平成7)年の精神保健福祉法改定で措置解除後の保健婦による訪問指導に関する規定が削除されてしまっている。これは特に問題を抱える措置入院患者の円滑な社会復帰と再発防止策にとっては大変問題が多いことを示していると考える。

 筆者らは2001年からの3年間,2001(平成13)年度厚生科学研究費補助金厚生科学特別研究事業「措置入院制度のあり方に関する研究(主任研究者 竹島正)」および2002(平成14)年度,および2003(平成15)年度厚生労働科学研究費補助金障害保健福祉総合研究事業「措置入院制度の適正な運用に関する研究(主任研究者 浦田重治郎)」において,2000年度の措置入院にかかわる行政資料に基づいた研究を行ってきている。その中の「措置入院者の症状消退届」を解析した結果に基づいて,措置解除の実態と問題点,措置解除後のアフターケアの実態,措置入院患者および重症精神障害者の退院後のケアについて検討してみた。

危機介入の評価

著者: 伊藤弘人

ページ範囲:P.607 - P.613

はじめに

 「危機介入の評価」は立場や関心によって2つの異なる意味を持つ場合がある。臨床家にとっての危機介入の評価とは,危機的状況への介入が適切であったのかを評価することであろう。その目的は,電話,初回面接時や入院時の対応は適切であったのかを評価し,今後さらによい介入方法を検討することである。一方,政策担当者や政策研究者は,危機介入の「制度(仕組み)」を評価することを思い浮かべることが多い。措置制度や移送制度などを,危機介入という文脈から評価するというものである。

 この違いは,評価する対象が実際の「介入の質」であるのか,「介入の制度(例:プログラム)」であるのかという違いに起因する。前者は個々の患者・利用者へのサービスに焦点を当てると考えるのが一般的である2)。後者は個々のサービスを意味する場合は類似するが,通常個別サービスにとどまらず,広く制度一般を評価することもある。

 両者には共通部分は多く,個々の介入の質の評価で十分な場合が多い。しかし,後述する「隠れている危機の評価」には,後者の視点が必要となる。そこで,本論では,危機介入の評価の枠組みを整理し,まず介入の質の評価を述べ,最後に制度の評価について考えてみたい。

福祉実践における危機介入

著者: 新保祐元

ページ範囲:P.615 - P.620

はじめに

 精神障害者の社会生活を安寧に維持するために,医療と併せて福祉の介入は欠かせない。精神障害者にかかわる領域でこのような認識が一般化されてきた大きな要因の一つは,精神衛生法が精神保健法及び精神保健福祉法へと改正施行される中で,国が障害者プランなどによって,精神障害者を地域で支えるシステムづくりの推進を図ろうとしていることによる。

 こうした状況は,医療と福祉を両輪とした支援の具体的展望,あるいは関連領域のさまざまな専門職やインフォーマルな社会資源を取り込んだ,包括的精神障害者支援の展開が求められているといえよう。とはいえ福祉実践における介入が,関連職種の方々にはどのような理論に基づいてなされるのか理解し難いか,あるいは福祉領域における特定の介入方法をもって福祉の介入と考えられがちである。例えば昨今よく使われる心理・社会的視点やケアマネジメントは,福祉実践における介入の一手法であり,福祉実践のすべてではない。また,福祉専門職の側もさまざまな支援のありようを支持するあまり,他の専門職からすると専門性が見えにくく,福祉実践の基盤と方法を伝えきれていないといってよい。

 では福祉実践の眼目とは何かといえば,それは社会福祉の価値として表現する事柄であり,多分に理念的・哲学的である。それでもなお福祉実践の第一義的要素を価値に置くのは,個の尊厳や人権に配慮し,利用者主体の考え方を堅持しながら介入していくうえで,ことのほか重要な介入意識(倫理観を含むないし形成する要素)となるからである。

 そこで小論では,最初に福祉における介入,すなわち福祉実践の考え方を整理し,そのうえで福祉実践における危機介入の考え方と,福祉の介入の意義などについて論じる。なお,事例を一つにとどめ,福祉施設体系の中での危機介入を十分論じることができなかった。それは小論の課題を福祉の介入方法に求めることで,関連領域の方々にその理解を求めようとしたことによる。

研究と報告

慢性期精神科病棟入院患者のQOL(Quality of Life)に関する研究

著者: 松下年子 ,   松島英介 ,   木野村睦 ,   宮本康史 ,   新貝憲利

ページ範囲:P.621 - P.627

抄録

 慢性期精神科病棟入院患者のQOLの実態,およびQOLに関連する臨床要因,環境要因,生活要因などを明らかにすることを目的に,年単位の長期入院生活を送っている女性統合失調症患者を対象として,聞き取り調査を実施した。その結果,平均年齢55.8歳の対象者の平均EuroQol得点は,おおむね一般人口における70~80歳代女性のそれに相当していた。また臨床要因との関連では,精神症状(BPRS)が,特に陽性,陰性の両症状に限定されることなく精神症状全体としてQOLに関連していた。精神症状の強い者のほうがそうでない者よりもQOLは低かった。また生活要因では,喫煙者のほうが非喫煙者よりもQOLが高い傾向が認められた。

強迫性障害(OCD)に関する9施設共同研究―半年間の総初診患者におけるOCD患者の割合,およびその臨床像に関する検討

著者: 松永寿人 ,   切池信夫 ,   大矢健造 ,   守田嘉男 ,   中井丈夫 ,   福居顕二 ,   山下達久 ,   吉田卓史 ,   多賀千明 ,   岸本年史 ,   徳山明広 ,   洪基朝 ,   米田博 ,   西田勇彦 ,   稲田泰之 ,   木下利彦 ,   柳生隆視 ,   越智友子 ,   武田雅俊 ,   中尾和久 ,   渡邊章 ,   前田潔 ,   千郷雅史 ,   中嶋照夫

ページ範囲:P.629 - P.637

抄録

 近畿圏の大学付属病院8施設を含む9つの総合病院精神科において,半年間の各施設の初診患者を対象とし,(1)総初診患者中,DSM-IVのOCDの診断基準を満たすものの割合,(2)OCDと診断された患者の臨床像,などについて調査した。総初診患者中のOCD患者の割合は,1.75~3.82%と算定され,OCD患者で認めた患者背景や臨床特徴,強迫症状の内容や重症度,各種心理テスト,および男女間比較などは,従来の報告とほぼ一貫した結果であった。これらは,OCDに関する信頼性の高い多施設研究の可能性を支持するものと考えたが,参加施設の特性に関連したバイアス,例えば都市圏の総合病院であることや専門外来の有無などの影響もうかがわれた。

性格・気質とセロトニンレセプター(HTR2A)遺伝子多型の関連性

著者: 寺山隼人 ,   和賀央子 ,   伊藤正裕 ,   岩橋和彦

ページ範囲:P.639 - P.643

抄録

 セロトニン(5-HT)は神経伝達物質の1つであり,その受容体は少なくとも14種のサブタイプからなる。なかでも,5-HT2A受容体は大脳皮質,辺縁系に存在し,アゴニストにより抑うつ,不安が起こり,幻覚,高体温,精神運動興奮などを生じる。このことから,不安,睡眠障害,自殺,統合失調症の陰性症状に関与しているのではないかと考えられている。

 今回我々は健常者130名に対し,書面においてインフォームドコンセントを行った後5-HT2A受容体のエキソン1サイレント変異(T102C)およびプロモーター領域の変異(A-1438G)の両遺伝子多型を同定した。PCR法により目的領域を増幅させ,RFLP法を用いて遺伝子型の判定を行った。T102CおよびA-1438Gの遺伝子多型の頻度が健常者の性格・気質に影響する1つの要因であるかを自己記入式質問紙法人格検査 NEO Five Factor Inventory(NEO-FFI)の得点を分散分析(ANOVA)を用いて比較検討した。その結果,これらの遺伝子多型が性格・気質の要素に関連する可能性が示唆された。今後,例数を増やすとともにより多くの性格検査を試行し,5-HT2A受容体やその他の受容体と性格・気質との関連を詳細に検討する必要がある。

短報

WISC-Ⅲによるアスペルガー障害と注意欠陥/多動性障害の認知プロフィールの比較

著者: 小山智典 ,   立森久照 ,   長田洋和 ,   金井智恵子 ,   志水かおる ,   栗田広

ページ範囲:P.645 - P.647

はじめに

 注意欠陥/多動性障害(Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder;AD/HD)は,米国では学童において3~7%の有病率が報告されている,児童精神医学領域ではもっとも有病率の高い障害の1つである。DSM-IV1)およびICD-1010)では,広汎性発達障害(Pervasive Developmental Disorders;PDD)であればAD/HDとは診断しないとされているが,不注意や社会性の障害など,両者は臨床的な類似性を有している2,9)。特に精神遅滞を伴わない(すなわちIQ70以上の)高機能PDDでは,対人関係障害などが比較的軽く,言語表出に障害がないため,AD/HDとの混同が生じうる。

 PDDの一型であるアスペルガー障害(症候群)(Asperger's Disorder;ASD)は,言語表出に遅れがなく,そのほとんどが高機能PDDである。Ehlersら3)は0.36%という比較的高いアスペルガー症候群の有病率を報告しており,このことは,臨床現場でのASDとAD/HDの適切な区別の重要性を示している。

 筆者らの知るかぎり,これまでにWISC-III(Wechsler Intelligence Scale for Children-Third Edition)を用いてASDとAD/HDの認知プロフィールを比較検討した研究は,内外ともにない。Nydenら7)はアスペルガー症候群,AD/HD群にWISC-IIIを施行しているが,各群のテスト再現性を検討したにとどまっている。筆者ら5)は以前,高機能PDDとAD/HDでのWISC-IIIプロフィールの比較結果を報告したが,今回は新たにケースを追加し,ASDとAD/HDのWISC-IIIプロフィールについて興味深い知見を得たので報告する。

Olanzapineによる初回エピソード統合失調症の治療―病識評価尺度を用いての検討

著者: 松本好剛 ,   名越泰秀 ,   福居顯二

ページ範囲:P.649 - P.652

はじめに

 初回エピソード統合失調症患者にほぼolanzapine単剤で治療し,BPRS上は良好な結果であった5例を呈示し,さらに病識評価尺度(金らによる)で評価した。精神疾患の初発時にいかに有効な治療をするかはその予後,再発防止,慢性化への移行の阻止の観点からも重要である。そこで金らによる病識評価尺度を慎重に患者へ侵襲的とならないように配慮しながら用い,症状の回復と病識の改善について検討したので報告する。

資料

総合病院のシステム充実に伴うコンサルテーション・リエゾン精神科医療の変化について

著者: 三澤仁 ,   加藤温 ,   笠原敏彦

ページ範囲:P.653 - P.657

はじめに

 近年,精神科医療の分野でコンサルテーション・リエゾン精神医学の重要性が高まっている。プライマリ・ケアやターミナルケアでの精神科的な素養,対応の必要性はもちろんのこと,2004年から始まる初期研修における精神科必修化を考えても,コンサルテーション・リエゾン精神医学の重要性は増すばかりである。ところが,実際には各医療施設の規模や患者の特徴などによってその内容は異なっており,同一施設においても運営方針やシステムの変更に伴ってリエゾン活動の重点も変化せざるをえない。

 本稿の目的は,こうした総合病院のシステムの変遷に伴う精神科リエゾン活動の実態変化を明確にすることである。そのため我々は,5年間にわたる国立国際医療センター(以下,当センターと略記)精神科のコンサルテーション・リエゾン活動の変化を,病院のシステム上の変遷(3次救急の発足,精神科ローテート研修の必修化,エイズ専門診療科の充実など)と合わせて検討した。当センター精神科のリエゾン活動の実態,経時的変化,当院の特徴などを報告し参考に供したい。

私のカルテから

クエチアピンによって惹起されたインスリン抵抗性高血圧症

著者: 長嶺敬彦

ページ範囲:P.659 - P.661

はじめに

 α1受容体遮断作用が強い抗精神病薬は高血圧を惹起しにくい。今回,α1受容体遮断作用が強い新規抗精神病薬であるクエチアピンにより高血圧を来した症例を経験した。高血圧の原因としてインスリン抵抗性が考えられたので報告する。

基本情報

精神医学

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-126X

印刷版ISSN 0488-1281

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