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Mild cognitive impairmentをめぐって
著者: 埴原秋児1 天野直二2
所属機関: 1信州大学医学部保健学科 2信州大学医学部精神科
ページ範囲:P.564 - P.570
文献購入ページに移動現在,アルツハイマー病(AD)の診断において,NINCDS-ADRDA43)やDSM-IV1)などの信頼性や妥当性の高い診断基準が臨床や研究の場面で用いられ,さらにMRIやSPECT・PETなどの機能画像の普及によって,ADの臨床診断の正確性はより高まった44)。現在,軽度から中等度のADの認知機能障害に対して,コリンエステラーゼ阻害薬による治療が行われ,痴呆の早期診断・治療は日常臨床に要求されている。また,アミロイドワクチンやγセクレターゼ阻害薬の開発など予防や根治を視点にした基礎研究の発展につれて,また,現行の抗痴呆薬の適応拡大の可能性など,ADの早期診断,あるいは発病以前の段階での診断や介入について関心が集まっている。
従来から,加齢に伴う認知機能の低下を表す概念は古くからさまざまな名称で用いられてきたが,2001年,Quality Standards Subcommittee of American Academy of Neurology(QSSAAN)は正常加齢と痴呆の移行状態を表す概念としてmild cognitive impairment:MCI(軽度認知機能障害)という術語を正式に採用し51),MCIという術語が現在は頻繁に使用されている。しかし,MCIの概念には未だ若干の混乱がある15,48,65)。本稿では,高齢者にみられる認知機能障害の概念の変遷を紹介し,またMCIの臨床的意義,問題点,最近の動向を概説する。
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