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特別寄稿
アリピプラゾールの創薬性―統合失調症治療における新しいドーパミンD2受容体パーシャルアゴニスト
著者: 融道男12
所属機関: 1東京医科歯科大學 2メンタルクリニックおぎくぼ
ページ範囲:P.855 - P.864
文献購入ページに移動近年統合失調症に対して,非定型抗精神病薬が使われる機会が多くなってきている。ここで紹介するアリピプラゾールは非定型抗精神病薬に含まれるが,他の薬剤と比べて,その作用機序は大きく異なっている。
アリピプラゾールの特徴は,ドーパミンD2受容体パーシャルアゴニストとして,シナプス前部のドーパミン自己受容体にはアゴニスト作用を有する一方,シナプス後部のD2受容体に対してアンタゴニスト作用を有することである。パーシャルアゴニストは,シナプス間隙での内因性の神経伝達物質の濃度によって,アゴニストにもアンタゴニストにもなる。この作用により,ドーパミン機能系を安定化させることが可能になる。
アリピプラゾールは,統合失調症の陽性・陰性症状の両方に効果があり,副作用はきわめて少ない。急性錐体外路症状,遅発性錐体外路症候群,高プロラクチン血症,体重増加,鎮静などの頻度が低く,糖・脂質代謝に悪影響はしない22)。米国では2002年に認可され,統合失調症の陽性・陰性症状に対して,第一選択薬として広く使用されている。海外ではアリピプラゾールの安全性・忍容性が高く評価されており,今後わが国でも統合失調症の治療において重要な選択肢として注目されている。
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