文献詳細
研究と報告
構成障害と記銘力障害で発症し精神病症状を伴った初老期痴呆の1例
著者: 北林百合之介1 上田英樹1 柴田敬祐1 中前貴1 濵元泰子1 松本良平1 小尾口由紀子1 國澤正寛1 成本迅1 福居顯二1
所属機関: 1京都府立医科大学大学院医学研究科精神機能病態学
ページ範囲:P.925 - P.931
文献概要
書字における構成の障害と記銘力障害で発症し,経過中,幻覚,妄想などの精神病症状を伴った初老期痴呆の女性例を経験した。神経心理学的検査では,他の認知機能障害に比して,特に左半側での構成障害が顕著であった。MRIでは右側頭葉および頭頂葉に脳萎縮を認め,海馬の萎縮は比較的軽度であった。SPECTでは右側頭葉後部から頭頂葉にかけての脳血流低下を認めた。本例の構成障害は右頭頂葉機能の障害に基づくものと考えられた。診断は,現時点では困難であるが,著しい左右差はあるものの後方皮質の障害が目立ち,病初期から記銘力障害も認められることからアルツハイマー病の可能性が高いと考えた。
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