文献詳細
文献概要
研究と報告
手指振戦を認めたせん妄症例について―ファモチジンとタクロリムスの関与
著者: 近間浩史1 本岡大道1 富田克1 前田久雄1
所属機関: 1久留米大学医学部精神神経科
ページ範囲:P.973 - P.979
文献購入ページに移動症例1は32歳,男性。症例2は55歳,男性。いずれも死体腎移植後より,タクロリムスとファモチジンが開始となった。症例1は術後4日目より,症例2は術後8か月後に幻視を主とするせん妄が出現,同時に手指振戦を伴っていた。両症例ともファモチジンのみ中止したところ,せん妄は速やかに消退した。ファモチジンは腎排泄性であるため,腎機能障害を持つ今回の症例では薬剤が体内で蓄積された可能性が推察された。手指振戦についてはタクロリムスが関与したと考えられた。脳波は両症例ともにせん妄期から改善期にかけてα活動の出現量が増加し,症状の改善と平行して変化した。脳波はせん妄症例のstate markerとして有用であった。
掲載誌情報