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文献詳細

雑誌文献

精神医学46巻9号

2004年09月発行

短報

SSRIとzolpidem服用後の幻視と健忘

著者: 稲見康司12 宮岡剛2 堀口淳2

所属機関: 1愛媛労災病院精神科 2島根大学医学部精神医学講座

ページ範囲:P.985 - P.987

文献概要

はじめに

 非benzodiazepine系睡眠導入薬であるzolpidemは,消失半減期が約2.4時間の超短時間作用型薬物であり,そのために翌日への持ち越し効果が少ないという特徴に加えて,GABAAニューロンのうちのω1受容体に対して比較的選択的に作用することから,服用後のふらつき・転倒の原因となる筋弛緩作用が弱い薬物として知られている13)。ω1およびω2受容体のいずれにも作用することが知られている従来のbenzodiazepine系睡眠導入薬と比較しても臨床効果に差はなく,またzolpidemには重篤な副作用が少ないという安全性の面においても高い評価を受けている9)。ところで,きわめて稀にではあるが,zolpidemの服用後に幻視を中心とした幻覚症やせん妄,あるいは夢遊といった精神症状が出現する場合のあることが国外で報告されてきている。しかし,同種の精神症状についての国内での詳細な報告は現在までのところ見当たらず,横山らが18),アンケート調査の中で,副作用に幻覚と書いた例があったと記載しているのみである。

 今回我々は,10mgのzolpidemを服用した後に,幻視あるいは視覚変容体験を主症状とし,その間のできごとについての健忘を残した1例を経験した。これらの症状は,zolpidemを服用していた約1週間の間,毎夜認められ,併用薬はそのままにして,zolpidemのみを中止することによって再び出現することはなかったことから,zolpidemによって出現した精神症状と考えることができ,若干の文献的な考察を加えて報告する。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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