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文献詳細

雑誌文献

精神医学47巻10号

2005年10月発行

文献概要

研究と報告

統合失調症として処遇されてきたAsperger症候群の1例―緊張病様行動の発現機序に注目して

著者: 鵜生嘉也1 大饗広之2

所属機関: 1三河病院 2名古屋大学精神科

ページ範囲:P.1085 - P.1092

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抄録

 広汎性発達障害の患者が統合失調症様症状を示すことがあることは以前から知られているが,その場合,それを原疾患に由来する症状と考えるべきか,統合失調症の合併(comorbidity)と考えるべきかについては,必ずしも十分に議論がなされているとはいえない。我々は,妄想を伴う緊張病様行動によって精神科を受診し,その後8年間にわたって統合失調症として処遇されていたが,その異常行動を詳細に検討した結果,Asperger症候群への診断変更が望ましいと考えられた1症例に遭遇した。この症例の統合失調症様症状は,“格闘技ゲーム”への過剰没入に関係するものであり,Asperger症候群に伴う解離様症状として解釈すべきと考えられた。

 Asperger症候群が統合失調症と誤って診断される可能性は以前より指摘されている(Wing 1981)が,本稿のように統合失調症からAsperger症候群への診断変更が正面から議論された報告はまれであると思われる。青年期以降のAsperger症候群の診断には難渋するところが多いが,今後研究が進むにつれて,同様の症例の報告が増えていくものと思われる。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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