文献詳細
特集 時代による精神疾患の病像変化
文献概要
はじめに
気分障害が個人的因子と環境的因子の相互作用の中で析出してくることは疑いない。一卵性双生児でも不一致例が少なくないことは環境因子の重要性を示唆するし,また地震や敗戦などの脅威的なライフイベントが出現したからといって,すべての人がうつ病を発症するわけではないことは周知の通りである。遺伝因はひとまずおくとしても,社会文化的な背景は,個人的因子,環境的因子の双方に影響を与えて気分障害の発症や病像,経過を規定する。
ただ,気分障害の病像変化を論じる場合には,確固たる実体があって,その現象像が変化しているということが暗黙の前提となるはずである。その意味で,遺伝負因の高い双極I型障害などは,確かに病像変遷を語れるが,軽症のうつ病にあっては,定義や一般の認知度,事例性の問題があり,過去の病像と現代のそれを比較する際に困難が生じる。いずれにせよ,現在のところ,正確な統計はないため,以下の議論はあくまで印象レベルにとどまっていることをあらかじめお断りしておく。
気分障害が個人的因子と環境的因子の相互作用の中で析出してくることは疑いない。一卵性双生児でも不一致例が少なくないことは環境因子の重要性を示唆するし,また地震や敗戦などの脅威的なライフイベントが出現したからといって,すべての人がうつ病を発症するわけではないことは周知の通りである。遺伝因はひとまずおくとしても,社会文化的な背景は,個人的因子,環境的因子の双方に影響を与えて気分障害の発症や病像,経過を規定する。
ただ,気分障害の病像変化を論じる場合には,確固たる実体があって,その現象像が変化しているということが暗黙の前提となるはずである。その意味で,遺伝負因の高い双極I型障害などは,確かに病像変遷を語れるが,軽症のうつ病にあっては,定義や一般の認知度,事例性の問題があり,過去の病像と現代のそれを比較する際に困難が生じる。いずれにせよ,現在のところ,正確な統計はないため,以下の議論はあくまで印象レベルにとどまっていることをあらかじめお断りしておく。
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