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特集 時代による精神疾患の病像変化
広汎性発達障害
著者: 川崎葉子1 三島卓穂2
所属機関: 1むさしの小児発達クリニック 2弘済学園
ページ範囲:P.165 - P.168
文献購入ページに移動おそらく,時代で大きく変化したのは,病像ではなく,専門家の視点のほうであろう。見ているのは,同じ自閉〔現在の広汎性発達障がい(pervasive developmental disorders;PDD)〕症の子どもの同じ言動である。なのに,時代が変わり,異なる学説の専門家がみると,万華鏡をみるように異なるものに見えてくる。医学の進歩の足跡を実感するとともに,まだまだ精神医学にあやうさがあるとも思う。
自閉症の登場は1943年,Kannerが「情緒的接触の自閉的障害」の論文で世に問うたことに始まる9)。もっとも,Kraepelinによって早発痴呆の概念が提唱されてから,小児期に発症する早発痴呆をDe Sanctisが「最早発痴呆」(1906)7)と, Hellerが「幼年痴呆」(1908)8)と報告しているが,これが自閉症の子どもであったとすれば,その歴史は20世紀初頭に遡る。さらに遡ると,18世紀末,医師Itardが教育したアヴェロンの野生児は自閉症であったろうとされている。
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