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文献詳細

雑誌文献

精神医学47巻2号

2005年02月発行

紹介

The Elgin Behavioral Rating Scale日本語版(JEBRS)

著者: 兼田康宏1 大森哲郎1

所属機関: 1徳島人学医学部・歯学部附属病院脳・神経・精神科 2 3

ページ範囲:P.209 - P.212

文献概要

はじめに

 統合失調症患者において,多飲,過食,せわしない歩行,過度の喫煙,異食,奇異な身だしなみ,収集,あるいは衒奇症といった常同行為はしばしば認められる。時として,これらの常同行為は,不幸にも患者に死を招く結果をもたらすことがある。しかしながら,多飲あるいは喫煙を除いては,現在のところ,常同行為については,十分に検討されているとは言えない。そこで,Luchinsら5)は,常同行為の頻度および重症度の系統的な評価を目的に,評価尺度,Elgin Behavioral Rating Scale(EBRS)を考案した。EBRSは,Bleuler3)とArieti1)の記述をもとに選ばれた多飲,喫煙,奇異な身だしなみ,過食,収集,衒奇症,せわしない歩行,および異食の8項目に性的行動過多を加えた9項目より成る(表1)。さらに,常同行為と他の精神症状との比較を目的に,Psychiatric Symptom Assessment Scale2)よりいわゆる陽性症状・陰性症状として各4項目が選ばれ,追加されている。各項目は0~6点で採点され,1~2点は軽度,3~4点は中等度そして5~6点は重度にランクされる。EBRS原版では,常同行為9項目の各アンカー・ポイントの内容が具体的に定義されていないため,Tracyら6)により定義付けが行われている。また,EBRSの評定者間信頼性の検定では,おおむね高い信頼性が得られているものの5,6),因子分析の結果およびCronbachのα係数より,常同行為9項目の得点を単純加算した総得点をもって,常同行為の重症度とすることができるかどうかについては,検討の余地がある5,6)

 常同行為の一部は動物モデルで容易に再現されることから,常同行為の把握は,統合失調症の発現機序の解明に有益なものと考えられるため,この度我々は,原著者の許可を得た上で日本語版を作成したので,ここに紹介する。日本語訳にあたっては,原文を知らない者に日本語訳のback-translationを行わせ,この英文を原著者に確認してもらった。なお,原著者の了承を得た上で,Tracyらによる各アンカー・ポイントの定義を付記してある。また,JEBRSの信頼性,妥当性については,すでに検討されている4)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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