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短報
抗うつ薬中止により社会復帰に至った双極性うつ病の2症例
著者: 鈴木克治1 田中輝明1 増井拓哉1 朝倉聡1 井上猛1 小山司1
所属機関: 1北海道大学大学院医学研究科精神医学分野
ページ範囲:P.297 - P.300
文献購入ページに移動双極性障害の薬物療法において,うつ病相に対する抗うつ薬の使用の是非に関する見解には賛否両論がある。ラピッドサイクラーをはじめ,抗うつ薬による病相の頻発化が明らかな場合,抗うつ薬の中止が治療戦略として推奨される一方で,特に本邦では,欧米でうつ病相に有用とされるlamotrigineやbupropionなどが上市されていないこともあり,うつ病相に対する治療薬として単極性うつ病と同様に抗うつ薬が繁用される傾向がある。抗うつ薬が双極性障害の縦断的経過に悪影響を与えることについては多くの指摘がなされているものの,我々の知る限り,双極性うつ病に対し抗うつ薬を中止して実際に良好な社会的転帰が得られたという報告は見当たらない。今回我々は,繰り返すうつ病相のため長期にわたり休職を余儀なくされていた難治性の双極性障害に対し,抗うつ薬を中止したところ,病相が完全に消失し復職に至った男性2症例を経験したので報告する。
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