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短報
多飲水・水中毒から全身性炎症反応症候群(SIRS)を経て播種性血管内凝固(DIC)に至った統合失調症の1例
著者: 原田研一12 山本健治2
所属機関: 1五稜会病院 2名寄市立総合病院神経精神科
ページ範囲:P.395 - P.398
文献購入ページに移動統合失調症を主とする慢性精神障害患者において時にみられる行動異常として多飲水(polydipsia)がある。摂取された水分量が排尿,発汗,不感蒸泄などによる水分排出能を上回った場合,希釈性の低Na血症が生じ,その程度が著しいと水中毒(water-intoxication)として臨床症状を呈することになる。水中毒の臨床症状は概して脳浮腫に起因しており,けいれん発作や意識障害などの神経症状,および精神病症状悪化などの精神症状が認められる。
また,多飲水・水中毒の生命予後は必ずしも良好とはいえず,重篤な身体合併症により死に至る場合もある2)。今回我々は,多飲水・水中毒から重篤な身体合併症として播種性血管内凝固(disseminated intravascular coagulation;DIC)に至った統合失調症の1例を経験した。本症例では,その経過を遡及的に検討するとDICに先行して全身性炎症反応症候群(systemic inflammatory response syndrome;SIRS)を呈していた。我々の知る限りでは,多飲水・水中毒の帰結としてDICを呈したとする報告はなく,多飲水・水中毒から重篤な身体合併症としてDICが生じる可能性があること,また早期の治療的介入に際して精神科領域においてもSIRSの概念が有用であることなど示唆に富む症例と思われるので,若干の考察を含めて報告する。
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