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短報
大きな透明中隔腔・ベルガ腔の残存を認めた統合失調症を伴う22q11.2欠失症候群の1例
著者: 秋久長夫123 笠井清登1 尾内秀雅2 尾内廸生2
所属機関: 1東京大学医学部附属病院精神神経科 2尾内内科神経科病院 3針生ヶ丘病院精神科
ページ範囲:P.399 - P.403
文献購入ページに移動22q11.2欠失症候群は,心血管奇形,顔貌の異常,胸腺低形成,口蓋裂,低Ca血症などを特徴とし,常染色体第22番長腕11領域の微小欠失を原因とした遺伝子疾患である。近年,22q11.2欠失症候群に統合失調症などの精神障害の合併が多くみられることから,22q11.2が統合失調症の関連遺伝子の1つである可能性が指摘されている2,6,13,14)。
22q11.2欠失症候群の脳構造異常について,これまで正中構造物の異常,脳室拡大,灰白質の縮小,脳梁の形成不全などが報告されている1~3,13)。正中構造物の異常について,海外の報告では透明中隔腔(CSP),ベルガ腔(CV)の残存が高頻度に認められるとされている1,3,13)。一方,本邦でも近年22q11.2欠失症候群と統合失調症の関連がトピックスとなってきており,22q11.2欠失症候群に何らかの精神障害を合併した症例報告が我々の知る限り計8例ある4,11,12,15)。しかし,本邦のこれらの報告では,脳構造の異常に注目した検討はなされていない。統合失調症患者でCSPやCVの残存が健常者より高頻度で認められる5,7,8,18)ことは,統合失調症の神経発達障害仮説20)の1つの証拠として考えられている。我々は今回,統合失調症を伴う22q11.2欠失症候群の1症例に大きなCSPおよびCVを認めた。このことは,22q11.2と神経発達障害,さらに思春期以降の精神病症状発現との関連を示唆する興味深い所見と思われたので報告する。なお,本報告にあたっては,本人に十分な判断力がないため,両親の同意を得た。
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