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研究と報告
遅発性ジストニア・ジスキネジアへの投薬計画:12症例の経験
著者: 髙橋三郎1 大曽根彰1 松田晃武1
所属機関: 1埼玉江南病院
ページ範囲:P.499 - P.508
文献購入ページに移動長期入院中,慢性統合失調症に対して定型抗精神病薬を中心とした薬物療法が行われ遅発性ジスキネジアを発症していた者7名に,D2受容体遮断作用がきわめて弱い非定型抗精神病薬quetiapineに置き換えたところ,その5例で投薬誘発性運動障害が消失したことを昨年報告した。その後,これらの症例について1年間の経過を調べた。
7症例のうち,前回の報告で効果なしまたは疑問とした3例は,quetiapineの投薬を1年間続けて,AIMS(異常不随意運動評価尺度)の得点が改善した。一方,精神症状の悪化や糖尿病併発のためにquetiapineからbutyrophenone系薬剤と抗コリン薬の投薬に再変更した5症例では,その投薬期間に対応して明らかにジスキネジアの症状が増悪した。
また,新しく遅発性ジスキネジアを伴う3症例とジストニアを伴う2症例に対してquetiapineによる治療を試み,うち3名に好ましい効果が得られた。
これらの症例の経験から,quetiapineは遅発性ジスキネジアだけでなくジストニアに対しても好ましい効果が確認され症状の改善が得られたが,butyrophenoneなどの定型抗精神病薬は明らかに症状を悪化させることを確認した。
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