文献詳細
書評
文献概要
著者は,精神分析療法から入門し,後にクライエント中心療法を学んだ心理臨床家である。本書は,著者が1989年から2003年にかけて書いた論文の集成である。全体は2部20章からなる。論文集であるため章によって筆致の違いがあるが,著者は常に治療者と患者との間に漂っていて言葉では表現しがたい微妙な関係がかもしだす“意味”について焦点をあてようとしている。
第Ⅰ部の「心理療法の構造と原則」では,心理療法を開始するところから進行していく時のそれがテーマの中心となっている。自説が繰り広げられるだけでなく,フロイトとウィニコットの事例が挙げられ,著者流の解読が試みられている章もある。第Ⅱ部の「心理療法の実践と応用」では,神経症,心身症,アノレキシア,境界例などの心理療法過程および心理検査を行う時のそれが取り上げられているが,症例とともに述べられているので実感を持って読み進めることができる。従来の概念では転移と逆転移にまつわる考察が中心のテーマといえようが,本書が特徴的なのは,それらについて著者が臨床の現場で自分の気持ちのひとつひとつをきめ細かく分解し,ていねいに見返していったときの実感を言葉にしようとしていることである。
第Ⅰ部の「心理療法の構造と原則」では,心理療法を開始するところから進行していく時のそれがテーマの中心となっている。自説が繰り広げられるだけでなく,フロイトとウィニコットの事例が挙げられ,著者流の解読が試みられている章もある。第Ⅱ部の「心理療法の実践と応用」では,神経症,心身症,アノレキシア,境界例などの心理療法過程および心理検査を行う時のそれが取り上げられているが,症例とともに述べられているので実感を持って読み進めることができる。従来の概念では転移と逆転移にまつわる考察が中心のテーマといえようが,本書が特徴的なのは,それらについて著者が臨床の現場で自分の気持ちのひとつひとつをきめ細かく分解し,ていねいに見返していったときの実感を言葉にしようとしていることである。
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