文献詳細
特集 リエゾン精神医学の現状と課題
透析,生体腎移植(サイコネフロロジー)におけるリエゾン―ことに小児,思春期の症例の経験を通して
著者: 春木繁一12
所属機関: 1松江青葉クリニック 2東京女子医科大学腎臓病総合医療センター
ページ範囲:P.837 - P.843
文献概要
筆者は,30数年間を一般臨床精神医学・医療に従事する傍ら,透析,腎移植,ことに生体腎移植のリエゾン・コンサルテーション医療にかかわってきた3,5)。その臨床経験を通して小児,思春期リエゾン精神医学の一側面について考えていることを述べてみたい。
最近では小児科からのリエゾンの依頼は「身体」面でも治療が難しく,「精神面」でも相当に援助が難しい疾患が増えている。思いつくだけでも,先天性心疾患,川崎病,心不全,胆道閉鎖症,劇症肝炎,急性白血病,若年性関節リウマチ,ネフローゼ・腎炎,腎不全,原発性免疫不全症候群,小児のエイズなどがある。
いずれも子どもは「生命の危機」を背負い,「生死についての不安・恐怖」を感じ,「生き残っても慢性化する疾病・障害」を持ち続ける運命にある。さらには冷徹な事実として「死」がいつでも起こり得る疾患であり,「死と隣り合わせ」の心理を抱えて生きていかねばならないcriticalな状況に置かれている。一方で,最近では,ケースによっては医療技術の進歩により「10年はおろか20年,時には30年以上を生きていくことができる」場合が起き得る医療でもある。が,そのためには心身両面で想像以上の困難が待ち受けている。それらに子ども本人と家族(ことに母親)が直面していかねばならない。
成田9)は,リエゾン精神医療では「あまり底の深い問題はとりあげない」と貴重な示唆をしているが,長期にわたりcriticalな状況の医療が続くことを考えると,ある程度「底の深い」問題も取り上げざるを得ないこともある。
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