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Quetiapine単独療法が著効を示した思春期双極性障害の1症例―思春期双極性障害への薬物治療
著者: 斉藤卓弥12 西松能子3
所属機関: 1アルバート・アインシュタイン医科大学精神科教室 2日本医科大学精神医学教室 3立正大学心理学部
ページ範囲:P.903 - P.907
文献購入ページに移動成人双極性障害の躁病相への治療薬としてlithiumや第一世代抗てんかん薬が第一選択剤・標準的治療薬物として長く用いられてきた。定型抗精神病薬は,以前より双極性障害患者の精神運動興奮状態や精神病症状の改善に補助的に使われたが,副作用から使用が避けられる傾向にある。一方,非定型抗精神病薬は成人双極性障害急性期躁状態に対して有効であることが系統的な臨床試験で明らかになった。現在,米国ではquetiapine, risperidone,aripiprazole,olanzapine,ziprasidoneが,成人双極性障害の躁病相の治療薬としての認可を受け,躁病相に対する新しい治療上の選択肢として治療に大きく貢献している。
一方で,約60%の双極性障害が18歳以前に初回のエピソードを体験しているにもかかわらず,思春期の双極性障害への薬物治療に関しては,lithium以外でプラセボーを用いた二重盲検試験は行われていない。今後lithiumが無効な症例あるいは副作用で服用が継続できない思春期双極性障害症例に対して有効な薬物療法を確立することが必要である。
この論文では,非定型抗精神病薬quetiapineが双極性障害患者の単独投与が急性期躁状態に有効であった思春期症例を報告し,最近の非定型抗精神病薬の思春期双極性障害への使用について文献的な考察を加えた。
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