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研究と報告
幻覚妄想や痴呆,人格変化などの多彩な精神症状を認めたⅡ型偽性副甲状腺機能低下症の1臨床例
著者: 木田涼12 稲見理絵12 大沼徹12 山田貴子13 木下潤一朗4 江渡江25 鈴木利人12 新井平伊12
所属機関: 1順天堂大学医学部附属順天堂越谷病院 2順天堂大学医学部精神医学教室 3朝霞病院 4順天堂大学医学部内科学教室代謝内分泌講座 5順天堂東京江東高齢者医療センター
ページ範囲:P.985 - P.991
文献購入ページに移動幻覚妄想状態により当初統合失調症と診断され,その後の長期経過で痴呆などの多彩な精神症状を呈し,偽性副甲状腺機能低下症と診断された症例を経験した。症例は58歳女性で,16歳時に被害関係妄想,精神運動興奮を呈し,薬物治療に抵抗性を示した。その後,次第に痴呆症状が前景化し,低Ca血症,高P血症に加え,低身長,肥満,円形顔貌,短指症などのAlbright体型,歯牙欠損を認め,偽性副甲状腺機能低下症Ⅱ型と診断した。画像所見では中等度の脳萎縮,大脳基底核の石灰化を,SPECTでは側頭葉,帯状回の著明な血流低下を認めた。以上の脳器質性変化は,本症の多彩な精神症状の発症に関与している可能性があると考えられた。偽性副甲状腺機能低下症では,本例のように統合失調症に類似した精神症状を呈する可能性があり,今後,さらに症例を重ね,本症の精神症状の特徴について検討する必要があると思われた。
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