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フランス・パリのロベール・デュブレ小児病院児童青年精神科
著者: 野村陽平12 島内智子3
所属機関: 1八幡厚生病院 2現・川崎医科大学精神科学教室 3Service de Psychopathologie de l’Enfant et de l’Adolescent, Hôpital Robert Debré
ページ範囲:P.1025 - P.1031
文献購入ページに移動2004年9月20日,筆者が所属する私的な精神科医の勉強会である小倉金曜会4,6)の諸先生方とともに,フランス・パリ19区にあるロベール・デュブレ小児病院の児童青年精神科を訪ねる機会を得た。
日本では,深刻な少子化問題が進む中で,近年不登校,児童虐待,いじめ,家庭内暴力,薬物乱用,触法問題など,子どもの「心」の問題が急増し,世間でも取り沙汰され,そうした子どもたちへのケアが重要視されるようになってきている。それにもかかわらず,日本の精神医学の中で,児童青年精神科医療は特に発展の遅れが目立つ。大学医学部の講座に児童青年精神医学は存在せず12),児童青年期の精神障害に対して的確に診断をし,治療プログラムを組み,家族やコメディカルに説明できる専門医は明らかに少ない。もちろん専門外来を掲げているところは幾つかあるが,それぞれの地域で継続的な治療を全うするのは困難なのが実情である。
北九州市の単科精神科病院に勤務している筆者にとっては,児童青年期の精神的な問題で診断や治療に自信が持てない場合,紹介できるところが近辺に少なく,北九州市子ども総合センターか北九州市立総合療育センターに限られる。しかしそういう専門医療機関は,スタッフが少ない反面,需要は多く,受診までに相当な日数がかかることがほとんどである。わが国のどこの地域でも,児童青年期の精神科治療に関しては大同小異ではないだろうか。今回パリの小児病院の児童青年精神科を訪ねたのは,以上のような現状を日々感じている中で,フランスでの児童青年精神科医療がどのようになされているかを見聞するためでもあった。
参加者は,伊藤正敏(和光病院),森山成杉(八幡厚生病院),脇元安(脇元クリニック),井本浩之(井本クリニック),小林義春(サクラクリニック),倉重真明(倉重クリニック),太田喜久子(寺町クリニック),奥田信子(小郡まきはら病院),下中野大人(行橋記念病院),柴原浩(同前)の諸先生と筆者の11人である。また2004年10月からフランス政府給費留学生として同科で研修することになっている,共著者の島内が通訳の労をとった(図1)。
今回の訪問先である児童青年精神科教授Marie-Christine Mouren女史と一行の中の森山は,森山が以前フランス留学中Mouren教授の父に師事して以来の知己であり,今回の訪問もそれがもとになっている。
当日は,Mouren教授とMarie-France Le Heuzey助教授から教室の概要の説明を受け,そのあと病棟などを一つひとつていねいに隅々まで見学した。最後に作業療法室でスタッフ手製のケーキをいただきながら,質疑応答の場が持たれた。
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