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文献詳細

雑誌文献

精神医学48巻10号

2006年10月発行

文献概要

研究と報告

解離性障害にみられる「夢中自己像視」―解離性意識変容の病態構造について

著者: 柴山雅俊1

所属機関: 1東京大学医学部精神神経科

ページ範囲:P.1053 - P.1060

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抄録

 解離性障害と診断された患者53名と対照群57名から得られたデータおよび治療経験を参考にして,「夢の中で視覚的に第三者の立場から自分の姿形を見る」という夢中自己像視を解離性離隔および表象幻視と比較検討し,解離性障害の意識変容の構造について精神病理学的考察を行った。夢中自己像視,解離性離隔,表象幻視の出現頻度について,解離群は対照群に比較して有意に高かった。またこれらの症状の諸属性について解離群と対照群を比較検討した。これらの症状における共通する構造として自己像を眼差す私と自己像への没入との視覚的両極構造を取り上げ,それは当事者視点と観察者視点とのパースペクティヴの両極構造でもあると論じた。

参考文献

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13) 安永浩:「宗教・多重人格・分裂病」その他4章.星和書店,2003

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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