文献詳細
短報
境界性人格障害に対するperospironeの臨床評価―後方視的研究より
著者: 福智寿彦1 湯浅省志1 北村岳彦1 兼本浩祐2
所属機関: 1医療法人福智クリニック 2愛知医科大学精神神経科
ページ範囲:P.1121 - P.1124
文献概要
境界性人格障害(BPD)は臨床現場で頻繁に遭遇し,治療に困難を極めることも珍しくなく,本邦でもさまざまの臨床的な格闘の末に得られた貴重な精神療法の成果が幾つかの成書として発刊されている3,8)。しかし,その対応は一筋縄ではいかないことが多く,その際,少なくとも一部の患者では薬物療法が貴重な手助けとなることも経験される。
境界性人格障害における薬物療法にはいまだ定まった指針はない。2001年アメリカ精神医学会(APA)が,初めて境界性人格障害の治療に関するpractice-guideline1)を作成し公表するとともに,海外において,本病態に関する薬物療法の研究発表5,6,10)が相次いでいる。
我々は,APAのpractice-guidelineに則り,薬物使用に関して,予想される副作用と期待される効果を説明し,SSRIや非定型抗精神病薬の投与に納得が得られた境界性人格障害患者に限ってSSRIや非定型抗精神病薬投与を行ってきた。
このような症例の中でperospironeが追加投与された症例について,その後の経過をカルテより後方視的に研究し,その有用性を検討したのでここに報告したい。
なお,perospironeは本邦で開発された唯一の非定型抗精神病薬であり,我々も統合失調症におけるperospironeの検討において,本薬剤が他の非定型抗精神病薬と比較してもとりわけ副作用の面で患者の負担が少ない薬剤であることを経験している2)。
参考文献
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