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書評
トリエステ精神保健サービスガイド
著者: 加藤進昌1
所属機関: 1東京大学付属病院精神神経科
ページ範囲:P.1151 - P.1151
文献購入ページに移動 本書はその名の通り,イタリアの北東端,長靴のほつれた糸みたいにとび出したトリエステ地方の精神保健サービスのガイドブックである。だからといって,訳者はイタリアに行った時に病気になったらどうするかという案内を目的として訳出したわけではない(もっとも少しは役に立つかもしれないが)。では,なぜガイドブックが遠く離れた日本で刊行され,あろうことか自分が書評を本誌に載せる羽目になったのか。
それは,本書が,精神医療改革の唱道者フランコ・バザリアが「精神科病院を廃絶する」急進的改革に着手して以来30年の到達点を如実に物語る「精神医療改革の案内書」だからである。そこには法律(当時有名になったもので法180号という)のこまごました解説も,赤旗たなびく急進的思想の羅列も何もない。本書を読んでいくうちに,地域の中で精神障害者がみんなと生活し,それをやわらかく保証する仕組みができていることが,読者にすんなり入っていくのである。これには本書のユニークな装丁もあずかっているかもしれない。まったくわが国のこういう類書の無味乾燥さを思うと好対照である。ほんとに,お役人にもセンスを持ってもらわなくては。
それは,本書が,精神医療改革の唱道者フランコ・バザリアが「精神科病院を廃絶する」急進的改革に着手して以来30年の到達点を如実に物語る「精神医療改革の案内書」だからである。そこには法律(当時有名になったもので法180号という)のこまごました解説も,赤旗たなびく急進的思想の羅列も何もない。本書を読んでいくうちに,地域の中で精神障害者がみんなと生活し,それをやわらかく保証する仕組みができていることが,読者にすんなり入っていくのである。これには本書のユニークな装丁もあずかっているかもしれない。まったくわが国のこういう類書の無味乾燥さを思うと好対照である。ほんとに,お役人にもセンスを持ってもらわなくては。
参考文献
1) 高橋正和:イタリア精神医療・右往左往の記.日精協雑誌 8:45-49,1989
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