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文献詳細

雑誌文献

精神医学48巻11号

2006年11月発行

短報

統合失調症外来例に対するSDA長期投与の臨床評価―Perospirone単独投与例とrisperidone単独投与例の比較

著者: 福智寿彦1 湯浅省志1 北村岳彦1 兼本浩祐2

所属機関: 1医療法人福智クリニック 2愛知医科大学精神神経科

ページ範囲:P.1229 - P.1231

文献概要

はじめに

 近年,risperidone(RIS)をはじめとするいわゆる非定型抗精神病薬の統合失調症治療における有用性はほぼ一般に認知されたといってよい状況であるが,本邦で発売されている非定型抗精神病薬4剤を例にとっても,それぞれの薬剤プロフィールの相違についてはいまだ検討の途上である。その中でも特に,D2受容体と5-HT2A受容体遮断作用を有する点において共通し,ともにserotonin dopamine antagonist(SDA)と呼ばれているperospirone7)(PER)とRIS5)の相違に関しては,PERが本邦で開発され,世界的には注目されることが少なかったことも相まって,特に臨床的なデータの蓄積が不十分な状態が続いている。しかしながら,特に不安・抑うつ症状に関しては,RISよりPERにおいてより改善する傾向が多かったとする報告が散見されており1,9),非定型抗精神病薬の先駆けであるRISにおいて注目されているawakening現象と統合失調症の不安・抑うつを関連させて論じている論文などを念頭におくと8,11),この相違は臨床上重要である可能性がある。

 今回我々は,両剤の臨床的な違いを明らかにしたいと考え,外来通院中の統合失調症患者において,それぞれの薬剤が単独で投与された症例を選択し,1年間経過観察を行い,Lindenmayer6),またそれときわめて類似した山科ら12)を参照してPANSSの5つの下位分類に関して前後を比較した。

参考文献

1) 藤田和幸,兼本浩祐:Risperidoneをperospironeに変更した33例の分裂患者における経験-慢性期分裂病におけるSDAからSDAへの切り替えの可能性.臨精薬理 5:375-382,2002
2) 笠井清登,荒木剛,山末英典,他:統合失調症におけるperospironeへの置換による認知機能の変化.精神薬療研究年報 36:140-144,2004
3) 木代眞樹:Perospironeへの切り替えによって統合失調症後の抑うつ症状(Post-schizophrenic depression)が改善した2症例とperospironeにparoxetineの追加投与により統合失調症後の抑うつ症状が改善した1症例.臨精薬理 8:1455-1461,2005
4) 小島照正,伊藤千裕,松岡洋夫:Haloperidolからperospironeへの切り替えによって慢性統合失調症患者のprepulse inhibitionが改善した1症例.臨精薬理 8:1443-1447,2005
5) Leysen JE, Janssen PM, Megens AA, et al:Risperidone:A novel antipsychotic with balanced serotonin-dopamine antagonism, receptor occupancy profile, and pharmacologic activity. J Clin Psychiatry 55(Suppl 5):5-12, 1994
6) Lindenmayer JP, Grochowski S, Kay SR, et al:Schizophrenic patients with depression:Psychopathological profilesand negative symptoms. Comper Psychiatry 32:528-533, 1991
7) 大野行弘:新規精神分裂病治療薬ペロスピロン(ルーラン)の研究開発.日薬理誌 118:39-42,2001
8) 三宮正久,勝久寿,中山和彦:初発統合失調症の未治療例に対するrisperidoneの臨床的検討:経過中にみられる「不安」に注目して.精神誌 105:643-658,2003
9) 住吉秋次:perospironeの外来症例に対する臨床評価-Risperidoneとの比較.臨精薬理 6:895-904, 2003
10) 武田俊彦,羽原俊明,佐藤創一郎:PerospironeとrisperidoneのD2阻害作用の日内変動-血清prolactin変動を指標にして.臨精薬理 7:1511-1517,2004
11) 田中謙二,藤井康男:Awakenings(めざめ現象)と非定型抗精神病薬への切り替え.臨精薬理 2:859-866,1999
12) 山科満,林直樹,五十嵐禎人,他:精神分裂病の症状構造.PANSSを用いた因子分析的研究.精神医学 40:951-957,1998

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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