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雑誌詳細

文献概要

特集 災害精神医学の10年―経験から学ぶ 国際的活動

神戸から埔里へ―震災後の精神保健での日本,台湾の協力

著者: 植本雅治1 鵜川晃1 川口貞親2 井上幸子3

所属機関: 1神戸市看護大学 2九州大学医学部保健学科 3京都女子大学発達教育学部

ページ範囲:P.305 - P.309

二つの地震

 1994年1月17日阪神・淡路大震災。神戸の精神科医師のすべては当然のことながら,災害精神医療に当たることとなった。次々と病院に運び込まれる負傷者の不安や恐怖,家族を失った人の悲しみへの対応から始まり,高揚期の躁状態,環境変化の中で顕在化する認知症,さらに時間が経つにつれ急速に増えてくる,うつ状態や,外傷後ストレス障害(以下,PTSD)。当時はすべてが全く未知の体験であり,混乱の中で情報を集めながら,試行錯誤を繰り返しながらの毎日であった5,7)

 1997年,9月21日に台湾中部に地震が発生した時,援助を申し出た神戸の精神医療の関係者にはその時の記憶が強く残り,自分たちが混乱の中で学んだことをなんとか生かせないかとの思いが強かった。しかしながら,精神医療には言葉の壁が大きく,外科や小児科医療のように被災者へ直接的な援助を行うことは難しい。できることは,経験を伝え,求めに応じ助言するぐらいであろうが,それでも少しでも役に立てればということであった。

参考文献

1) 井上幸子,川本朋,三津あずさ:“台湾埔里921大地震”被災児童への心的外傷後の予防的視点によるフィンガーペインティングのこころみ.日本箱庭療法学会第15回大会 発表論文集,2001年9月
2) Kurumatani T, Ukawa K, Kawaguchi Y, et al:Teachers' Knowledge, beliefs and attitudes concerning schizophrenia. A cross-cultural approach in Japan and Taiwan. Soc Psychiatry Psychiatr Epidemiol 39:402-409, 2004
3) 塩山晃彦,植本雅治,新福尚隆,他:阪神淡路大震災が小中学生にもたらした心理的影響(第二報).精神誌 102:481-497,2000
4) 財)長寿社会研究機構 こころのケア研究所:旭成社,2001,災害後のメンタルヘルス活動に関する国際比較 阪神・淡路大震災と台湾大地震の比較を通して.2001
5) 植本雅治:阪神大震災後の精神医療─直後から初期,中期への状況.現代のエスプリ別冊 被災者の心のケア.pp121-128,1996
6) 植本雅治,塩山晃彦,小出佳代子,他:阪神淡路大震災が小中学生にもたらした心理的影響(第一報).精神誌 102:459-480,2000
7) 植本雅治,高宮静夫,井出浩:阪神淡路大震災が子どもたちにもたらした精神医学的影響とその経過.臨精医 29:17-21,2000
8) 鵜川晃,植本雅治,川口貞親,他:震災後の子どものメンタルヘルスに関する心理学的研究─日本と台湾におけるキャンペーンの効果について(投稿中)

掲載雑誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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