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文献詳細

雑誌文献

精神医学48巻3号

2006年03月発行

文献概要

特集 災害精神医学の10年―経験から学ぶ 国際的活動

ペルー日本大使公邸人質占拠事件の心理的影響

著者: 金吉晴1 笠原敏彦2 小西聖子3

所属機関: 1国立精神・神経センター精神保健研究所成人精神保健部 2笠原メンタルクリニック 3武蔵野女子大学人間関係学部

ページ範囲:P.311 - P.317

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はじめに

 海外の日本人を対象とした,国外組織による人質監禁事件としては,某商社マニラ支店長の誘拐事件(1986年11月15日~翌年3月31日),ペルー日本大使公邸人質占拠事件(1996年12月17日~翌年4月22日),キルギス邦人誘拐事件(1999年8月23日~10月25日),イラク邦人人質事件(2004年4月8~15日,同年10月28~30日)が知られている。国内では,赤軍派によるハイジャック事件,西鉄バスジャック事件,あさま山荘事件,三菱銀行人質事件などが生じている。

 このうちペルー人質事件は,この種の事件の中で人質のメンタルケアに焦点が当てられ,専門家派遣が行われた初めての例である。海外の文献を読むと,誘拐,人質事件に際しては,人質ならびに犯人の心理的変化の研究は少なからずあり,人質のメンタルケアのみならず,犯人との交渉にも応用されているが,日本ではその種の文献はこの事件以前にはほとんど存在していなかった。

 本稿では,ペルー人質事件についての活動報告を通じて得られた知見について紹介する。個人が特定されないように記述は断片的なものとし,改変を加え,また途中で解放された人質,ペルー人人質の記述も織り交ぜてある。個人が特定できるおそれのある情報は記載していない。

参考文献

1) Corrado RR, Tompkins E:A comparative model of the psychological effects on the victims of state and anti-state terrorism. Int J Law Psychiatry 12:281-293, 1989
2) Flynn E:Victims of terrorism:Dimensions of the victim experience. In:Wilkinson P, Stewart AM, eds. Contemporary research on terrorism. The University Press, Aberdeen, pp337-357, 1987
3) 笠原敏彦,金吉晴,小西聖子:在ペルー日本国大使公邸占拠事件における人質家族のメンタルヘルスとその支援活動:精神医学 41:1237-1242,1999
4) 笠原敏彦:わが国の災害PTSD─ペルー人質事件.精神科治療学 13:851-854,1998
5) 金吉晴,笠原敏彦:人質テロ事件.臨床精神医学講座S6 外傷後ストレス障害(PTSD),中山書店,2000
6) 金吉晴:人質事件.心的トラウマの理解とケア.じほう,2001
7) 金吉晴:厚生労働科学研究費補助金労働安全衛生総合研究事業(テロ等による勤労者のPTSD対策と海外における精神医療連携に関する研究)班 平成16年度報告書,2005
8) 小西聖子:犯罪・テロリズムにおける被害者心理.全国公安委員連絡協議会,1998
9) 小木貞孝:拘禁状況の精神病理.異常心理学講座第5巻.みすず書房,1965
10) Siegel RK:Hostage hallucinations. Visual imagery induced by isolation an life-threatening stress. J Nerv Ment Dis 172:264-272, 1984
11) Skurnik N:Le syndrome de Stockholm(Essai d’Étude de ses Critères). Soc Med Psychol 146:174-181, 1988
12) Symonds M:The second injury to victims and acute responses of victims to terror. Evaluation and Change 36:36-38, 1980

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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