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特集 災害精神医学の10年―経験から学ぶ 国際的活動
ペルー日本大使公邸人質占拠事件の心理的影響
著者: 金吉晴1 笠原敏彦2 小西聖子3
所属機関: 1国立精神・神経センター精神保健研究所成人精神保健部 2笠原メンタルクリニック 3武蔵野女子大学人間関係学部
ページ範囲:P.311 - P.317
文献購入ページに移動海外の日本人を対象とした,国外組織による人質監禁事件としては,某商社マニラ支店長の誘拐事件(1986年11月15日~翌年3月31日),ペルー日本大使公邸人質占拠事件(1996年12月17日~翌年4月22日),キルギス邦人誘拐事件(1999年8月23日~10月25日),イラク邦人人質事件(2004年4月8~15日,同年10月28~30日)が知られている。国内では,赤軍派によるハイジャック事件,西鉄バスジャック事件,あさま山荘事件,三菱銀行人質事件などが生じている。
このうちペルー人質事件は,この種の事件の中で人質のメンタルケアに焦点が当てられ,専門家派遣が行われた初めての例である。海外の文献を読むと,誘拐,人質事件に際しては,人質ならびに犯人の心理的変化の研究は少なからずあり,人質のメンタルケアのみならず,犯人との交渉にも応用されているが,日本ではその種の文献はこの事件以前にはほとんど存在していなかった。
本稿では,ペルー人質事件についての活動報告を通じて得られた知見について紹介する。個人が特定されないように記述は断片的なものとし,改変を加え,また途中で解放された人質,ペルー人人質の記述も織り交ぜてある。個人が特定できるおそれのある情報は記載していない。
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