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書評
精神科医からのメッセージ―トラウマと未来―精神医学における心的因果性 フリーアクセス
著者: 十川幸司1
所属機関: 1十川精神分析オフィス
ページ範囲:P.345 - P.345
文献概要
我々の臨床の現場が,この20年の間に大きく変化したことは,精神科医の間の共通した認識となっている。なるほど80年代までの臨床の変化は,向精神薬の発展という科学的進歩に基づくものと一応考えることができる。だがその後も精神科医療は,大した技術的・制度的刷新がないにもかかわらず変化し続けた。この現象をどう考えればいいだろうか。一つには精神科医療の守備範囲の拡大といった社会的事情や,DSMという多くの精神科医が侮っていた分類体系が,現場の臨床のみならず,現実の臨床像をも変えてしまったという,分類的知が持つ「現実構成的」な力をその要因と考えることもできる。しかしこのような水準の議論では現在の状況の本質をとらえることはできないだろう。そこで著者が立ち向かうのは近代(モダン)とは何かという巨大な問いである。
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