icon fsr

文献詳細

雑誌文献

精神医学48巻4号

2006年04月発行

研究と報告

抑うつ症例における逃避傾向の精神病理構造

著者: 小野博行1

所属機関: 1東京芸術大学保健管理センター

ページ範囲:P.415 - P.423

文献概要

抄録

 1977年に提唱された広瀬の逃避型抑うつにおいて,逃避・恐怖症的傾向が主題的に論じられたが,この傾向が前景に立つ抑うつはその後も増加しつつあり,現代における抑うつの中心的特徴の1つとして挙げることができる。本稿ではその逃避傾向に焦点を絞り,提示2症例の言動に基づいて精神病理学的考察を行った。その結果,逃避傾向の基底には,役割関係を中心とした外的規範系・評価系と機能連関を成している内的賞罰系の「ポジティヴ-ネガティヴ」バランスが急峻に変動しやすい,という精神病理構造の存在が推定された。さらには,このような視点から,前稿で論じた主体のホメオスタシスにつき,発展的再規定を行った。

参考文献

1) Beck AT, Rush AJ, Shaw BF, et al:Cognitive Therapy of Depression. Guilford Press, New York, 1979
2) 廣松渉:新哲学入門.岩波書店,1988
3) 廣松渉:存在と意味 第二巻.岩波書店,1993
4) 広瀬徹也:「逃避型抑うつ」について.宮本忠雄 編:躁うつ病の精神病理2.弘文堂,pp61-86,1977
5) 広瀬徹也:出勤拒否.臨精医 25:863-867,1996
6) 松本雅彦,大森和広:感情障害とその周辺─「逃避型抑うつ・中年型」について.精神医学 32:829-838,1990
7) 松浪克文,大前晋:内因性うつ病とパーソナリティ─現代型うつ病(恐怖症型うつ病)と分裂気質者の呈する内因性うつ病.精神科治療学 14:729-738,1999
8) 小野博行:抑うつ症例における身体症状と出社困難の関係について.精神医学 47:717-723,2005

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら