精神医学48巻4号

2006年04月発行

私のカルテから

Tandospironeの追加投与が強迫症状の改善に有効であったと考えられた統合失調症患者の1例

著者： 山本暢朋¹ 織田辰郎¹

所属機関： ¹独立行政法人国立病院機構下総精神医療センター精神科

ページ範囲：P.451 - P.453

文献概要

はじめに

　統合失調症に強迫症状が出現しやすいことは古くから注目され，発症期または残遺期に観察される頻度は高いと考えられる⁴⁾。Tandospironeは本邦に唯一上市されているazapirone系抗不安剤であるが，benzodiazepine系抗不安薬とは異なり5HT_1A agonistとしての薬理作用を有するため，強迫性障害などに対しても増強作用を認めるとの報告がある。今回我々は，治療に抵抗を示した強迫症状に対しtandospironeの追加投与が有効であった統合失調症の症例を経験したので報告する。

参考文献

1) Bark N, Lindenmayer JP：Ineffectiveness of clomipramine for obsessive-combulsive symptoms in a patient with schizophrenia(letter). Am J Psychiatry 149：136-137, 1992

2) 千葉繁，吉田幸宏：抗てんかん薬の作用機序．松下正明 編．臨床精神医学講座14 精神科薬物療法．中山書店，pp104-115，1998

3) 姜昌勲，杉原克比古，五十嵐潤，他：タンドスピロンとSSRIによる併用療法が奏効した強迫性障害の1例．精神医学 44：299-301，2002

4) 松本雅彦，漆原良和：強迫症状．松下正明 編．臨床精神医学講座1 精神症候と疾病分類・疫学．中山書店，pp104-115，1998

5) 森川将行，伊藤直人，飯田順三，他：慢性精神分裂病の強迫症状がfluvoxamineの併用により軽減した3症例．臨精医 30：423-430，2001

6) Schmidt AW, Lebel LA, Howard HR Jr, et al：Ziprasidone：A novel antipsytic agent with a unique human receptor binding profile. Eur J Pharmacol 425：197-201, 2001

7) Stahl SM：Essential Psychopharmacology. Cambridge University Press, 1996(仙波純一 訳：精神薬理学エセンシャルズ．メディカル・サイエンス・インターナショナル，pp220-234，1999)

8) Stahl SM：Essential Psychopharmacology Second edition. Cambridge University Press, 2002(仙波純一 訳：精神薬理学エセンシャルズ 第2版．メディカル・サイエンス・インターナショナル，pp415-425，2002)

9) Tibbo P, Warneke L：Obsessive-compulsive disorder in schizophrenia. J PsychiatricRes 34：139-146, 2000