文献詳細
研究と報告
日本版バーチャルハルシネーション(VH)を用いた統合失調症の疾患教育の試み―アンケート調査の結果の解析
著者: 松本武典1 小堀修2 勝倉りえこ3 大森まゆ1 丹野義彦2 原田誠一1
所属機関: 1国立精神・神経センター武蔵病院精神科 2東京大学大学院 3神田東クリニック
ページ範囲:P.487 - P.494
文献概要
1990年代後半に,統合失調症の急性期でみられる幻覚妄想症状を疑似体験できるバーチャル・ハルシネーション(以下VH)がアメリカで開発され広く利用されてきた。しかしアメリカ版VHの内容に関していくつかの問題点が指摘され,2003年春に筆者の1人が精神医学面の監修を担当して日本版VHの制作が始まった。同年末に日本版VHが完成し,現在日本版VHの活用が始まっている。
今回我々は,高校生・専門学校生・看護学生・大学生の総計545名を対象として日本版VHを用いた統合失調症の疾患教育を実施して,無記名のアンケート調査を行った。調査結果から,日本版VHが統合失調症に対する正しい理解を促し,早期発見・早期治療や薬物乱用の予防にも寄与し得る可能性が一定程度示された。同時に,不安を惹起するなどのいくつかの問題点も明らかになったので,今後VHを利用する際の参考に留意していきたいと考えている。なお今回のアンケート調査の対象には心理・看護系の学生が多く含まれており,結果に影響を与えている可能性があると思われる。今後,日本版VHを体験したさまざまな人を対象としてアンケート調査を行い,検討を続けていく予定である。
参考文献
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