文献詳細
文献概要
シンポジウム MCIとLNTDをめぐって
MCIとLNTD―精神科の立場から
著者: 池田研二1
所属機関: 1(財)慈圭病院・慈圭精神医学研究所
ページ範囲:P.561 - P.566
文献購入ページに移動はじめに
MCIの状態から認知症への移行についての臨床研究では,報告によって幅があるが,1年で7~20%であるとされている。単純に計算すると,MCIが5年後に認知症に発展する割合30~60%程度ということになる。すなわち,かなりの割合でMCIから徐々に複数の認知機能障害を呈するに至り,ATDがその中心疾患であると考えられている。いずれにせよ,認知症に進展する群には,アルツハイマー型認知症(ATD)なり,脳血管性認知症(VaD)なり,病理学的基盤がその背後に想定されている。しかしながら,認知症に進展しない症例も多い。以下に2~3の文献を引用して紹介するように,MCIから認知症に移行しない群のみならず,正常化する場合も多い。さらに,MCIの状態に長くとどまったり,長く病的な記憶障害(amnestic MCI)が続いた後に認知症に進展する症例も少なからず存在する。このような症例群については,それがどのような病理学的な基盤に基づくものであるかは興味が持たれるところであるが,これまでに具体的に言及されていないし,まとまった病理報告もない。この報告はそのようなMCIが長く続く病態の少なくとも一部は,tangle-only dementia10),神経原線維変化型老年期認知症(SD-NFT)11)あるいは辺縁神経原線維変化型認知症(LNTD)と呼ばれる,比較的,最近になって知られるようになった高齢者の認知症性疾患が相当するのではないか,ということを紹介するものである。
MCIの状態から認知症への移行についての臨床研究では,報告によって幅があるが,1年で7~20%であるとされている。単純に計算すると,MCIが5年後に認知症に発展する割合30~60%程度ということになる。すなわち,かなりの割合でMCIから徐々に複数の認知機能障害を呈するに至り,ATDがその中心疾患であると考えられている。いずれにせよ,認知症に進展する群には,アルツハイマー型認知症(ATD)なり,脳血管性認知症(VaD)なり,病理学的基盤がその背後に想定されている。しかしながら,認知症に進展しない症例も多い。以下に2~3の文献を引用して紹介するように,MCIから認知症に移行しない群のみならず,正常化する場合も多い。さらに,MCIの状態に長くとどまったり,長く病的な記憶障害(amnestic MCI)が続いた後に認知症に進展する症例も少なからず存在する。このような症例群については,それがどのような病理学的な基盤に基づくものであるかは興味が持たれるところであるが,これまでに具体的に言及されていないし,まとまった病理報告もない。この報告はそのようなMCIが長く続く病態の少なくとも一部は,tangle-only dementia10),神経原線維変化型老年期認知症(SD-NFT)11)あるいは辺縁神経原線維変化型認知症(LNTD)と呼ばれる,比較的,最近になって知られるようになった高齢者の認知症性疾患が相当するのではないか,ということを紹介するものである。
参考文献
1) Braak H, Braak E:Neuropathological stageing of Alzheimer-related changes. Acta Neuropathol 82:239-259, 1991
2) Ganguli M, Dodge HH, Shen C, et al:Mild cognitive impairment, amnestic type:An epidemiologic study. Neurology 13:115-121, 2004
3) 池田研二,近藤ひろみ,藤嶋敏一,他:長期の臨床経過を辿り老人斑に乏しいアルツハイマー型老年痴呆の1例.脳神経 45:455-460,1993a
4) 池田研二,羽賀千恵,藤嶋敏一,他:非痴呆者大脳皮質のアミロイドβタンパクの検討─軽度アルツハイマー型痴呆との比較.精神医学 35:959-966,1993b
5) Ikeda K, Akiyama H, Arai T, et al:A subset of senile dementia with high incidence of the apolipoprotein E epsilon2 allele. Ann Neurol 41:693-695, 1997
6) Ikeda K, Akiyama H, Arai T, et al:Clinical aspects of’senile dementia of the tangle type’─a subset of dementia in the senium separable from late onset Alzheimer's disease. Dement Geriatr Cogn Disord 10:6-11, 1999
7) Ikeda K, Mizuno Y, Akiyama H, et al:Early diagnosis of Alzheimer's type dementia with special reference to the clinicopathology of mild cognitive impairment. Psychogeriatrics 4:89-95, 2002
8) Ishikawa T, Ikeda M, Matsumoto N, et al:A longitudinal study regarding conversion from mild memory impairment to dementia in a Japanese community. Int J Geriatr Psychiatry 21:134-139, 2006
9) Larrieu S, Letenneur L, Orgogozo JM, et al:Incidence and outcome of mild cognitive impairment in a population-based prospective cohort. Neurology 59:1594-1599, 2002
10) Ulrich J, Spillantini MG, Goedert M, et al:Abundant neurofibrillary tangles without senile plaques in a sebset of patients with senile dementia. Neurodegeneration 1:257-164, 1992
11) Yamada M, Itoh Y, Otomo E, et al:Dementia of the Alzheimer type and related dementias in the aged:DAT subgroups and senile dementia of the neurofibrillary type. Neuropathology 16:89-98, 1996
掲載誌情報