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文献詳細

雑誌文献

精神医学48巻7号

2006年07月発行

オピニオン 操作的診断基準の有用性と限界をめぐる今日的問題

操作的診断基準の有用性と限界をめぐる今日的課題―児童精神医学の立場から

著者: 山崎晃資1

所属機関: 1目白大学人間社会学部

ページ範囲:P.717 - P.719

文献概要

児童精神医学と操作的診断基準

 力動的精神医学を基盤にして発展してきた児童精神医学においては,伝統的に診断分類(グループ的接近,名称的診断)よりも診断フォーミュレーション(個人的接近,自己歴的診断)が重視されてきた。Kanner4)は,Diagnosis(診断)のギリシャ語の語源が「知識のすべて」という意味であることから,単なる疾病や状態に名称をつけることを越えて,その人についての知識を完全なものとするために,問題そのものについての認識,問題を生じた因子,問題を持つ子どもについての理解を包含したものでなくてはならないと強調した。

 1980年のDSM-Ⅲの登場は衝撃的であった。多軸診断が取り入れられ,第1軸に広汎性発達障害(最初は「全般性発達障害」と訳されていた)が,第2軸に人格障害と特異的発達障害が記載され,重複診断が推奨された。しかし,わが国では第4軸(心理社会的ストレスの強さ)と第5軸(過去1年間の適応機能の最高レベル)が,それほど活用されなかった。ここでは,DSM診断を取り上げて,児童精神医学における操作的診断基準の諸問題について述べる。

参考文献

1) Bouras N, Drummond C:Behavioral and psychiatric disorders of people with mental han-dicapped living in the community. J Intellect Disabil Res 36:349-357, 1992
2) Dosen A:Diagnosis and treatment of psychiatric and behavioural disorders in mentally retarded individuals:The state of the art. J Intellect Disabil Res 37(Suppl 1):1-7, 1993
3) 本城秀次:乳幼児の行動評価-Zero to Threeの臨床への応用.精神療法 29:543-550,2003
4) Kanner L:Child Psychiatry. Springfield, Charles C. Thomas, 4th ed., 1972(黒丸正四郎,牧田清志 訳:カナー児童精神医学.医学書院,1974)
5) 山崎晃資:精神遅滞と精神医学的合併症.精神医学レビュー 23:78-87,1997
6) 山崎晃資:乳幼児精神医学.樋口輝彦,神庭重信,染矢俊幸,他 編著,KEY WORD・精神・第2版.先端医学社,pp98-99,2000
7) 山崎晃資:注意欠陥/多動性障害.山崎晃資,牛島定信,栗田広,他 編著,現代児童青年精神医学.永井書店,pp156-170,2002
8) 山崎晃資:なぜいま特別支援教育なのか.児童心理(増刊号825号):2-12,2005
9) Zero to Three/National Center for Infants, Toddlers and Families, 1997(本城秀次,奥野光 訳:精神保健と発達障害の診断基準-0歳から3歳まで.ミネルバ書房,2000)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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