文献詳細
短報
治療抵抗性統合失調症に対し使用したestriolによる不正性器出血がraloxifene投与にて改善した1例
著者: 萬谷昭夫1 藤川徳美1 大森信忠1
所属機関: 1賀茂精神医療センター
ページ範囲:P.777 - P.779
文献概要
統合失調症患者の抗精神病薬への反応性にはエストロゲンが関与していると考えられており8,9),エストロゲンにはdopamine系や5-HT系をdown-regulateする作用や神経成長因子への作用,脳保護作用などがあると報告されている。高齢の女性統合失調症患者に対してestradiol(E2)やestriol(E3)4)が臨床効果を認めたとの報告がいくつかみられる一方,エストロゲン投与による乳癌や子宮癌の発症や不正性器出血が問題となっており,子宮癌の発症を予防する目的でprogesteroneが広く併用されているが,逆に乳癌の発生頻度は増加する7)。
閉経後骨粗鬆症治療剤として開発された選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)のraloxifene(RAL) は乳腺,子宮ではエストロゲンに拮抗作用を示し,中枢神経においてはエストロゲン作用を示す10)ため,閉経後の治療抵抗性統合失調症患者治療における有効性と安全性が予想され,エストロゲンとRALを併用することにより乳癌,子宮癌の発症や不正性器出血を軽減できる可能性がある。
今回我々はE3が効果のあった治療抵抗性統合失調症の女性患者に対し,E3にRALを併用することにより不正性器出血を改善させた症例を経験した。RALがエストロゲンによる副作用軽減に効果があると考えられたので報告する。
参考文献
掲載誌情報