文献詳細
書評
文献概要
本の紹介に入る前に,訳者の洲脇寛先生のことを記したい。洲脇先生は私が研修医だったころ,その大学病院精神科の病棟医長をされており,私にとっての精神科医の最初のモデルであった。
ある時,急性期の患者さんが離院しようとでもしたのか,閉鎖病棟から勢いよく走り出てきた。それに気づくと,彼はさっと駆け寄り,ふんわりとしかしガッチリと抱きかかえたのだ。そのシーンは私の記憶に今もしっかりと刻まれていて,臨床家のあるべき姿として事あるごとに蘇ってくる。患者さんの意思に反した強制はできる限り少なくしたい。しかし,治療を引き受けた以上,責任を持って治療にあたらなければならない。矛盾した思いであるが,しかし毅然として両立させる。傍らで呆然と立っていた私とガッチリと抱き止めた洲脇先生。その一瞬は私に多くのことを考えさせた。
ある時,急性期の患者さんが離院しようとでもしたのか,閉鎖病棟から勢いよく走り出てきた。それに気づくと,彼はさっと駆け寄り,ふんわりとしかしガッチリと抱きかかえたのだ。そのシーンは私の記憶に今もしっかりと刻まれていて,臨床家のあるべき姿として事あるごとに蘇ってくる。患者さんの意思に反した強制はできる限り少なくしたい。しかし,治療を引き受けた以上,責任を持って治療にあたらなければならない。矛盾した思いであるが,しかし毅然として両立させる。傍らで呆然と立っていた私とガッチリと抱き止めた洲脇先生。その一瞬は私に多くのことを考えさせた。
掲載誌情報